無線波で実現する次世代エッジAI、エネルギー効率を大幅に向上
デューク大学のチエン・ティンジュン教授らの研究チームは、無線波を活用してエッジデバイス上で高効率なAI処理を実現する新技術「WISE(Wireless Smart Edge)」を開発した。この技術は、ドローンやセンサー、ロボットなど、ネットワークの端末で自律的な意思決定を行う「エッジAI」の課題を解決する可能性を秘めている。従来、エッジデバイスにAIモデルを内蔵すると、メモリと電力消費が大きく、バッテリー寿命が短くなる。一方、クラウドに処理を任せる方法は遅延やセキュリティリスクを生じる。WISEは、この二択の限界を乗り越える第三の道を提示する。 WISEの核となるのは「イン・フォイジックスアナログ計算」。AIモデルの重み(計算に必要な数値)を無線周波数(RF)信号として基地局から送信。その信号が近接するデバイスに到達すると、デバイスの既存の無線部品(例:周波数ミキサー)が、入力データとRF信号を直接アナログで混ぜ合わせ、AIの主要な演算処理の一部を実行する。この過程で、デジタルプロセッサに依存せず、電力消費を大幅に削減できる。 実験では、WISEは短時間で数千枚の画像を高精度(96%の分類精度)で処理。従来のデジタルプロセッサと比べて、エネルギー消費は10倍以上低かった。さらに、5GやWiFiの既存インフラを活用でき、特別なハードウェアを追加する必要がない点も利点。デバイスに内蔵されている周波数ミキサーなど、既存の部品を再利用するため、追加コストや消費電力増加も最小限に抑えられる。 研究の主担であるチエン教授は「無線波自体が計算を助ける」と説明。今後は、長距離通信や複数モデルの同時送信など、課題の克服が求められるが、1つの基地局が複数のドローンや交通監視カメラを制御するなど、大規模なAI連携の実現が見込まれる。この技術は、通信と計算を融合させ、無線ネットワークに「知能」を内蔵する新たな道を開く。
