完全オープンな主権AI基盤モデル公開
スイス人工知能イニシアチブが推進するApertusプロジェクトは、EPFL、ETH Zurich、CSCSによる学術・研究機関の連携のもと、主権あるAI基盤モデルを完全オープンで提供することを目的として始動した。同プロジェクトは、訓練データ、コード、モデル重み、学習手法、アラインメント原則に至るまで全てを文書化し再現可能とすることで、オープンソース精神をAI分野へ徹底して展開している。 Apertusは8Bおよび70Bパラメータ規模のモデルを提供し、最新の数値オープンモデルと競争力のあるパフォーマンスを達成している。多言語対応を初期段階から徹底し、1000以上の言語を学習データに含めている。また、EU AI Actへの準拠を設計段階から統合しており、オプトアウトの尊重、個人特定情報の削除、学習データ記憶の防止機能を備え、規模を問わず規制遵守を実現する基盤となっている。 直近の開発動向では、3月17日にスイス南部チチーノ州向けの言語特化モデルを公開し、地域内のAI翻訳基盤として運用を開始した。4月25日には、同プロジェクトの技術報告書が自然言語処理分野のトップ会議ACL 2026で採択され、学術的な評価を高めている。さらに6月15日には、モデルの軽量化と高効率化を示す実証例としてApertus Miniをリリースし、16種の小型言語モデルを蒸留および量子化技術を駆使して公開した。これらは、大規模モデルを用途に合わせて最適化するための手法論としてコミュニティへ展開されている。 スイス通信大手のSwisscomが戦略的パートナーとして参加し、インフラ面から支援を行っている。プロジェクト側は継続的なリサーチとコミュニティ連携を重視しており、技術アップデートや新モデルの展開に関する情報を公式ニュースレターで提供している。Apertusは、透明性と再現性を最優先する主権AIの枠組みを提示し、欧州におけるAIガバナンスと技術自立の新たな基準を形成しつつある。
