機械学習が大地震前の隠れ地震パターン解明
地質調査ヘルムホルツセンター(GFZ)のサデグ・カルイミリ博士とパトリシア・マルティネス=ガルソン教授らは、大規模地震発生前に隠れた地震活動パターンを検出する新たなデータ駆動型手法を開発した。同手法は教師なし機械学習を用い、既存のカテゴリーや仮定に依存せず、データ自体が示す構造を抽出する。従来の個別地震分析ではなく、時間・空間・規模で密接に関連する地震のファミリーに焦点を当て、クラスタリング度合い、空間的・時間的集中、応力指標などの物理統計的特徴を解析することで、断層系が不安定化する臨界状態への移行を特定する。 同チームはトルコの2023年カフラマンマラシュ(Mw7.8)、チリの2014年イキーケ(Mw8.1)、イタリアの2009年ラクイラ(Mw6.1)地震に本手法を適用した結果、本震数週間から数ヶ月前から明瞭な臨界カテゴリーの出現を検出。地震活動の相互作用増大と空間的・時間的集中の強化により、応力蓄積過程が可視化された。一方、2016年アマトリチェ(イタリア)地震や2024年中能登(日本)地震では前兆現象が検出されず、すべての地震が明確な信号を示すわけではないことが示された。これは断層の種類や地質条件、監視環境の複雑さに起因する。 本手法は確定的な予測を目的とするものではないが、断層系が通常と異なる状態へ移行したことをリアルタイムで察知する運用型地震予報ツールとしての可能性を示す。研究結果は学術誌Nature Communicationsに発表され、欧州研究評議会ERCプロジェクトの支援のもと、実環境での継続的モニタリングと前兆検出のメカニズム解明が進められる。機械学習と地質物理モデルの融合は、従来の観測では見逃されていた地震発生プロセスの新規理解を促し、将来の防災・減災戦略に寄与することが期待される。
