AI時代に蘇る英文学部の価値:創造性と人間らしさが新たな強みに
人工知能(AI)の進化が、伝統的に「実用性に欠ける」とされてきた英語専攻(English major)の価値を再評価するきっかけとなっている。コロラド大学ボルダー校のジョン・マイケル・リヴァーラ氏は、AIと人文学の交差点をテーマにした「Inclusive Interdisciplinary Data Science for All」という共同講義を紹介。この授業は、STEM学生にAIの倫理を学ばせるとともに、人文学部の学生がAIが文章をどう書くか、そして「自己」とは何かを考察する機会を提供している。リヴァーラ氏によると、英語専攻の学生数は2021年から9%増加し、パンデミック前の減少傾向から回復している。 その背景には、AIが大量の文章を生成できる一方で、創造性や人間的なニュアンス、個性を再現できないという認識がある。西南ミネソタ州立大学のジェシー・ヘネン氏は、「AIに創作を奪われたくない」という学生の意識の変化を指摘。彼女は、創作が「金儲けのため」ではなく「人間的な理由」で行われるという価値観が、学生のモチベーションを高めていると語る。 リヴァーラ氏やライス大学のカテーリン・キャンニング氏らも、AIとの対話の中で「なぜ」という問いを深く探る人文学の役割が重要だと強調。ある授業では、学生がAIが出力したエッセイと自分の作品を比較し、違いを分析する課題が行われる。これは、AIの限界を理解し、人間の解釈力や自己反省の重要性を学ぶ機会となる。 こうした動きは、一部の企業にも影響を与えている。Anthropic共同創業者ダニエラ・アモデイ氏は「人間らしさがますます重要になる」とし、優れたコミュニケーション能力を持つ人材を重視すると語っている。Korn Ferryのブライアン・アッカーマン氏も、「ソフトスキルや共感力、人間性」がAI時代に求められると指摘。グローバル人材会社Glocommsのジャンカルロ・ヒルシュ氏は、歴史専攻など人文学出身者も面接プロセスに進む機会が増えていると報告。 ただし、全体的な雇用市場は依然厳しく、特に初期キャリアの人文系卒業生の失業率は他分野より高い。ジョー・クラマー氏(2020年卒)は、AIが大量の業務を自動化しているため、人材の需要が縮小していると危惧。しかし、専門家は「AIの導入が進む中で、人間の創造的思考や差別化能力の価値が高まる」と予測。AIが同じ出力を生み出す中で、人間の独自性と表現力こそが競争力になると指摘される。英語専攻の復活は、まだ始まったばかりの「人間らしさの復権」の兆しである。
