脳型モジュールAI、判断プロセスを可視化する
EPFLの研究者らが、人間の脳に着想を得た新規大規模言語モデル「MiCRo」を開発し、ICLR 2026で発表した。同モデルは既存AIのブラックボックス化という課題を解決し、処理の透明性と制御可能性を大幅に向上させることを目的としている。 MiCRoは、言語、論理、社会的推論、世界知識の4つの専門領域を「エキスパート」として模倣したモジュラー構造を採用している。従来の言語モデルが質問を固定的な層で処理するのに対し、MiCRoは各層内で単語単位で最適のエキスパートを動的にルーティングする。これにより、算術処理は論理エキスパートへ、他者の心理や文脈の読み取りは社会的推論エキスパートへ自動的に振り分けられる。この分離構造によりモデルの思考過程が可視化され、プロンプト調整に頼らずアーキテクチャレベルで各モジュールの影響力を操作可能となる。 開発はEPFLのNLP LabおよびNeuroAI Labのチームが主導し、神経科学者のグレタ・タクチ氏が協力した。チームは人間の脳画像解析で用いられる手法をAI設計に転用し、負荷の高い課題に対する内部の活性化パターンを自動特定するプロセスを確立した。このアプローチは、神経科学の知見をAIに反映させる一方、AIの処理分布データを通じて脳の機能分担を逆照査する新たな研究サイクルを創出する。 本開発は説明可能性を重視する次世代AI研究の重要な転換点となる。深層学習の内部構造を認知機能に近づけることで、信頼性の高い意思決定支援や各分野への応用が期待される。同時に、神経科学と機械学習の学際的融合を加速させ、認知メカニズムの解明にAIが貢献する新しいパラダイムを提示している。
