AIスタートアップが「偽りのAI」で成功をつかんだ裏話:人間が100回以上の会議を手書きで記録した真相
AIスタートアップ「Fireflies.ai」の共同創業者、サム・ウドトン氏とクリシュ・ラミネニ氏は、製品の概念を検証するため、2017年に「AIボット」として偽装し、100回以上にわたり手作業で会議のメモを取っていた。その体験をウドトン氏がLinkedInに投稿した記事は、約3,000件のリアクションと多数のコメントで話題となり、「仮装して成功を手に入れる(fake it till you make it)」というスタートアップの伝統的手法が再注目された。 当時、両氏は資金が尽きかけ、サンフランシスコの高騰する家賃を支えるため、コードを書く前に「本当に需要があるか」を検証する必要に迫られていた。彼らは友人らに月額100ドルで会議メモの自動化を提供すると宣伝。実際には、名前を「Fred」として仮想AIと称し、自らが会議に参加し、手書きでメモを取るという人間による手作業を実施。1日以内にメモを提供する体制を整え、需要の高さを確認した。 ラミネニ氏は、100回以上の会議をこなすうちに、人間の限界とストレスに直面し、本格的な自動化の必要性を痛感した。2018年後半には完全自動化された製品を開発。2019年末にはベータテストを実施し、機関投資家向けにライブデモを行い、400万ドルを超える初期資金を調達。投資家は「初期ユーザー向けに手作業で検証した経験が、本当に必要な機能を理解する助けになった」と評価した。 専門家からは「偽装検証(pretotyping)」として評価される一方で、倫理的リスクも指摘されている。帝国理工学院のティム・ウィース教授は、初期段階での仮装は一般的だが、投資や製品公開後に続けることは問題だと指摘。ペンシルベニア大学のケビン・ワーバーン教授は、「うまくいけばスティーブ・ジョブズの『現実歪曲フィールド』のような力であり、失敗すればエリザベス・ホルムズのように逮捕されるリスクがある」と述べ、状況によるバランスが重要だと強調した。 現在、Fireflies.aiのAIは2000万人以上が利用し、累計20億分の会議メモを処理。ラミネニ氏は「AIに対する懐疑は当然だが、資金調達やプロダクト開発では透明性が不可欠。永遠に仮装することはできない」と語っている。
