SpaceXがMIT創業者のAIツールCursorを600億ドルで買収
米スペースXは2026年6月16日、AIプログラミングツールCursorの開発元Anysphereを総額600億ドルで株式交換により買収すると正式発表した。この合意はスペースXが6月12日にNASDAQで史上最大規模の上場を果たした直後の発表であり、全額株式支払いとなる。Anysphere創設者でCEOのマイケル・トゥール氏を含むMIT卒4名が中心となり2023年にリリースしたCursorは、18ヶ月で年間収益が10億ドルを超え、B2B SaaS業界で過去最速の成長曲線を記録していた。 買収に至った根本的な要因は、AIプログラミング市場における基盤モデル依存の構造的脆弱性にある。Cursorは当初AnthropicのClaudeモデルに高度に依存していたが、Anthropicが自社の競合ツールClaude Codeを本格商業化しOpenAIもCodexを提供開始したことで市場地位が脅かされた。トゥール氏は2026年1月、緊急幹部会で自前モデル開発へ転換する方針を打ち出した。Anysphereは中国の月之暗面が公開する基盤モデルを基盤として後処理を加えた独自モデルComposerの開発に注力していたが、大規模な推論に必要な計算資源の不足が最大の課題となっていた。 スペースX側も同じ構図を解消するために買収に踏み切った。同社はxAIの買収に伴いテネシー州メンフィスに設置した世界最大級のスーパーコンピューターColossusを擁するが、自社AIプロダクトGrokのコーディング能力向上には限界があった。取引条項には買収が頓挫した場合にAnysphereが15億ドルの解消金と85億ドル分の無償算力を提供する規定が含まれており、双方が求める計算資源とソフトウェアの統合を明確に示している。 業界関係者は、今回の買収がAI開発ツールの競争軸をアルゴリズムから独自インフラへと移行させる転換点になると指摘する。スペースX創設者のイーロン・マスク氏は買収発表後、Grokのコーディング性能がCursorのデータ投入により大幅に向上したことを明らかにした。トゥール氏も歴史的に前例のない特別なものだと述べ、AnysphereチームがColossusの計算資源を駆使して自前モデルを完成させるかどうかが、次代のAI開発ツールの覇権を握る鍵となると分析されている。
