Anthropic、自社創薬へ着手
アントロピックは先週開催されたイベント「The Briefing: AI for Science」で、科学者向け統合AI環境「Claude Science」を発表した。同社はこれに加え、独自創薬事業への本格参入を表明し、「忘れられた疾患」の治療薬開発に注力する方針だ。 Claude Scienceは断片化した研究ツールとデータセットを一元化し、図表生成などを行うワークベンチとして設計されている。一方、創薬部門責任者のエリック・カウダーラー=アブラムス氏は、同社が自ら候補薬を開発すると明言。これにより、アントロピックは製薬企業向けソフトウェアを提供しつつ、実質的に競合他社として創薬に参画する異例の立場を構築した。 専門家からは、AI創薬の現状と限界に関する分析が相次いでいる。ケンブリッジ大のハン氏やUCLのトッド教授は、AIが標的同定や化合物生成を加速させるのは事実だが、臨床治験や承認に至るまでには依然として長期間を要すると指摘。生体反応に関する高品質な実験データが不足しており、予測モデルだけでは不十分であるとの見解が示された。オックスフォード大のフォン・デルフト教授も、AIが実験や臨床試験を代替できる段階にはまだ遠く、候補薬の安全性検証には多大な資源と熟練した研究体制が不可欠であると強調した。 アントロピックはこの課題を認識し、過去1年でバイオロジストの採用を加速し自社ウェットラボの整備を進めている。学術機関や製薬大手からも専門家を引き抜く動きが活発だ。 総合的に見ると、アントロピックの創薬参入はAI企業がインフラ提供者から医療製品開発主体へ転換する画期的な試みである。ただし、規制承認と市場投入には少なくとも10年単位のタイムラグが想定され、短期的な成果は限定的である。本動向は、AI駆使型創薬競争の行方を決定づける重要な指標となると同時に、技術的楽観論と現実的な研究コストの乖離を明確に示している。
