新AIも医療で人種・性別の固定観念を再現
フリンダース大学は最近、次世代推論型大規模言語モデルであるo3-miniとDeepSeek-R1が医療文脈において人種および性別のバイアスを依然として再現していることを実証した。同大学のJoshua Docking氏とMichael Sorich教授らが主導した本研究では、これらのモデルが3万6000の架空患者ケースを生成し、既存のGPT-4と比較検証を行った。その結果、推論能力の向上が必ずしも医療分野の公平性や代表性の改善につながらないことが明らかになった。 研究チームは、生成された症例の分布が実際の疫学データと著しく乖離していることを発見した。GPT-4が人種および性別の統計的誤差閾値を67%の症例で超えていたのに対し、o3-miniは人種で78%・性別で56%、DeepSeek-R1は人種で89%・性別で67%に達し、バイアスの程度は同等または悪化していた。特に、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、子癇前症、本態性高血圧など特定疾患において黒人患者が過剰に割り当てられる傾向が顕著で、中央値ベースの誤表現率は以前のモデルを大幅に上回った。DeepSeek-R1の推論過程を分析した結果、モデルは確率的データではなく疾患と人口統計の固定観念に依存して患者背景を選択していたことが裏付けられた。 研究者らは、推論型LLMの性能向上が倫理的・公平性の次元で自動的に伴うわけではないと指摘する。医療現場での疾患の有病率理解は診断推論の基盤となるが、特定の人口統計を一方的に強調することは臨床判断を歪め、健康格差の拡大リスクをもたらす。Sorich教授は医療AIを安全に統合するにはこうした人口統計上のデフォルト値に対する認識を高め、導入段階から継続的なバイアスモニタリングを実施する必要があると警告している。 本研究成果は学術誌Journal of Medical Internet Researchに発表された。AIの医療応用が進む中で、アルゴリズムの性能評価に加えて、代表性の監視と公平性保証の枠組み構築が緊急課題となっている。
