AIが化学合成の「レシピ本」を進化させ、ドラッグデザインを加速するMOSAIC平台が登場
米ヨーレ大学の化学者らが、AIを活用した新薬開発を加速するプラットフォーム「MOSAIC」を開発した。このシステムは、化学反応の膨大な知識を「AIエキスパート」の集まりとして構造化し、実験プロトコルを自動生成する。化学合成は従来、数ヶ月から数年の時間と労力がかかるが、MOSAICは世界中の最新の研究データを統合し、新規化合物の合成手順を迅速に提示できる。 研究を主導したヨーレ大学のヴィクター・バティスタ教授(エネルギー科学研究所・量子インスティテュート所属)は、「化学には数百万もの反応プロトコルが蓄積されているが、それを実践的に活用するのは大きな課題だった。MOSAICは、情報過多を実用的な実験手順に変える仕組みだ」と説明。同プラットフォームは、2,498の専門AIエキスパートで構成されており、それぞれが特定の化学分野(例:触媒反応、有機合成など)のトップレベルの知識を持つ。まるで、複数の世界最高のシェフが同時に料理の手順をアドバイスするようなものだ。 同研究の共同筆頭著者であるトム・ニューハウス教授は、「化学者は分子を合成する際にレシピを守る。MOSAICは、ChatGPTが料理レシピを検索しやすくするのと同じように、合成プロトコルの検索を容易にする」と述べた。 MOSAICは、従来の単一の大規模モデルに比べ、多様な化学空間(医薬品、触媒、新材料、農薬、化粧品など)において優れた性能を発揮。研究チームは、このシステムを用いて35種類以上の未報告の化合物を成功裏に合成した。さらに、各プロトコルの信頼性を「不確実性の推定値」として提示し、実験の優先順位付けを支援する。 MOSAICは完全にオープンソースで、将来のAIモデルとも連携可能。研究チームは、「AIが予測にとどまらず、実際に実験を支援する段階へ進むべきだ」と強調。バティスタ教授は「化学は書籍からデータベース、そしてAIによるナビゲーションへと進化している」と述べ、MOSAICを「知能あるレシピブック」と「化学合成のGoogleマップ」と位置づけた。 この技術は、新薬開発のスピードと精度を飛躍的に高める可能性を秘めており、今後の科学研究に大きな影響を与えると期待されている。
