ニューラル反復選択展開で薬物結合タンパク質設計
小分子結合タンパク質のゼロショット設計を可能にする新アルゴリズムNISE(Neural Iterative Selection-Expansion)が開発され、創薬・分子ツール分野で重要な進展をもたらしている。従来のデノボ設計は実験的スクリーニングや古典的能量関数に依存していたが、本手法は配列・構造・リガンド立体配置の三重自己整合性を最大化する反復最適化プロセスを採用している。設計パイプラインでは、タンパク質リガンド複合体の配列予測に特化したニューラルネットワークLASErMPNNを、構造共予測にはRoseTTAFold All-AtomやBoltz-2を組み合わせ、エネルギーベースの手法を排除して純粋にニューラルネットワークのみで閉ループ最適化を完結させる。 実証実験では、抗がん剤エキセカンの結合タンパク質EPICを設計した。初期の解離定数Kdは120ナノモルであったが、LASErMPNNを用いた単一アミノ酸変異のニューラル実証を経て1.2ナノモルまで改善された。EPICは標的薬剤の不安定なラクトン環をタンパク質内部に封じ込めることで、生理的条件下での加水分解から99%以上を保護し、持続的な薬剤供給キャリアとしての応用可能性を実証した。また、抗凝血剤アピキサバンの設計では異なるタンパク質骨格NTF2フォールドとBoltz-2を組み合わせ、Kd 80ピコモルの高親和性結合体APEXを獲得した。この親和性はアピキサバンの天然標的である第Xa因子に匹敵する。 本手法は既存のCOMBSやLigandMPNN対Rosettaアプローチと比較して設計成功率が3桁以上向上し、親和性においても万倍の差をつけた。計算リソースを少数の候補に集中投入する広域探索と深層最適化のパラダイムを採用し、エネルギー関数では捉えられない複雑な分子認識ルールをニューラルネットワークの確率分布から学習している。骨格トポロジーに依存しない汎用性が確認されており、次世代バックボーン生成モデルとの連携によりさらに高速・高精度な分子ツールの創製が期待される。本研究はタンパク質リガンド相互作用の設計ルールを深層学習で実証し、個別化医療や分子レベルの生物学制御に向けた迅速な試薬開発の基盤を形成するものとなっている。
