AIががん免疫療法反応を高精度予測
ハーバード大学医学部研究チームは、がん免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に対する患者の反応を高精度に予測する人工知能モデル「COMPASS」を開発した。同研究成果は学術誌「Nature Medicine」に発表されている。ICIは免疫系を活用した画期的な癌療法だが、有効率は癌種により10〜40%程度にとどまり、誰が反応するかを事前に特定できないことが治療選択と臨床試験設計のボトルネックとなっていた。 COMPASSは免疫細胞の活性や腫瘍微小環境と関連する約1万6,000遺伝子の発現パターンを解析する。同モデルはコンセプトボトルネックトランスフォーマーを採用し、従来のAIが持つブラックボックス問題を解決する。研究を率いるマリンカ・ジトニク准教授は、米国がんゲノムアトラスの1万184例の腫瘍データで基礎学習を行った後、16件の臨床試験結果でファインチューニングを実施した。その結果、COMPASSは既存の予測手法を平均8.5〜10%上回る精度を示し、異なる癌種や薬剤、検査プラットフォームを問わない頑健性を確認した。さらに解釈可能性の高い設計により、免疫反応が期待と逆転するケースの生物学的機序を明確に特定することに成功している。 臨床検証が完了すれば、COMPASSは医師の投与判断を支援する意思決定ツールとして実装される。これにより、患者への個別化医療が加速し、臨床試験の被験者選定効率も大幅に向上する。また、モデルが抽出する免疫応答の新たな仮説は、次世代抗癌薬の開発標的創出にも直結する。研究チームは今後、電子カルテ情報や単一細胞解析データを統合し、予測精度をさらに高める計画だ。本技術は、免疫療法の臨床応用とがん個別化医療の実現に重要なマイルストーンとなる。
