AIチャット記録も弁護士-client特権の対象外、判決が明言
米国ニューヨーク南地区連邦裁判所のジェド・ラコフ判事が、AIチャットボット「Claude」の会話記録が弁護士・依頼人間の特権保護(弁護士依頼人特権)の対象にならないと判断した。この判決は、法律上の秘密情報がAIに共有された場合、その情報が裁判で開示されるリスクがあることを示している。 被告は、金融スタートアップ「Beneficient」の共同創業者で、GWGホールディングスの1億5000万ドル相当の詐欺容疑で起訴されたブレッド・ヘッパーナー氏。彼は捜査対象であることを知った後、弁護士を雇い、複数のチャットでAnthropicのClaudeに弁護戦略の草案や法的根拠の整理を依頼していた。弁護側は、これらのチャットが「弁護士と相談するための準備資料」であるとして、特権保護を求めていた。 しかし、ラコフ判事は、ヘッパーナー氏がAIに情報を入力した時点で、第三者(AI)に情報が開示されたと判断。Claudeのプライバシーポリシーには「入力された内容は機密ではない」と明記されており、弁護士依頼人特権の対象外であると述べた。また、弁護士がClaudeの使用を指示していなかったため、「作業成果特権」(work product privilege)の適用も認められなかった。 この判決は、法律関係者から大きな注目を浴びている。弁護士のモイシュ・ペルツ氏は「方向性としては正しい」と評価し、「多くの機密情報がAIに投入されている」と警鐘を鳴らした。また、労働法専門家のノア・ブンツル氏は、「法的秘密がAIによって失われる可能性がある」と指摘。民事訴訟では、相手側のAIチャットが開示要求の対象となるケースが増加しており、「新たな発見情報の世界」と形容している。 これまでにも、ChatGPTを使った契約回避の記録が裁判で問題視された例や、ニューヨークタイムズがOpenAIを提訴した際、同社が数百万件のチャットログの保存を命じられた事例がある。専門家は、法的枠組みが整備されるまで、弁護士はクライアントにAIへの機密情報入力を厳重に警告すべきだと強調している。
