AIが交通信号のタイミング変更による事故発生を予測——ジョンズ・ホプキンス大が新モデルを開発
ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが、交通事故の発生リスクを予測する人工知能(AI)ツール「SafeTraffic Copilot」を開発した。このAIは、交差点の信号機のタイミングを20秒から30秒に変更した場合、事故件数が増えるか減るかを予測できる。研究の主著者で、ジョンズ・ホプキンス大学の都市・システム工学准教授であるハオ・「フランク」・ヤン氏は、「交通事故は天候、交通量、道路設計、ドライバーの行動など、多数の要因に影響される複雑な現象。SafeTraffic Copilotは、こうした複雑さを簡素化し、インフラ設計者や政策立案者にデータに基づく安全対策の知見を提供する」と説明する。 このAIは、大規模言語モデル(LLM)を活用。6万6000件以上の事故記録を学習素材として、道路状態、血液中アルコール濃度の数値、衛星画像、現場写真などを統合的に処理。従来の機械学習モデルでは、訓練データと類似しないケースには予測ができないが、生成型AIであるSafeTraffic Copilotは「もし~なら」という仮定シナリオ(what-if)を明確に提示できる。たとえば、信号のタイミング変更や道路構造の変更が事故に与える影響を、数値で示すことが可能だ。 また、AIの予測にどれだけ信頼できるかを示す「信頼スコア」を出力。AIは「ブラックボックス」として、判断の根拠が不明なため、信頼性の可視化は安全分野での活用に不可欠。ヤン氏は「AIは人間の判断を補完する道具。専門家がその結果を解釈し、意思決定に活かすべきだ」と強調。 2025年現在、メリーランド州では1年間で381人が交通事故で死亡。過去10年間で死亡者数は2013年の466人から2023年の621人に増加。同モデルの分析では、アルコール飲酒や危険運転が事故の3倍以上の原因を占めている。 ヤン氏は、このモデルがボルチモア市やカウンティ、さらには台湾やフィリピンなど、二輪車事故が多発する南アジア諸国にも応用可能だと述べ、文化的・運転習慣の違いを文章で簡単に伝えることで、国ごとの状況に合わせたカスタマイズが可能になると期待している。研究は『Nature Communications』に2025年4月に掲載された。
