AI が中性子星データで核力解明を加速
ロサンゼルス国立研究所とドイツダルムシュタット工科大学の共同研究チームが、人工知能と機械学習を活用し、中性子星の観測データから原子核内の複雑な核力を解明する新たな手法を確立しました。この研究成果は学術誌「Nature Communications」に掲載され、天体物理学的なマクロな現象と量子レベルのミクロな現象を直接結びつけることを可能にしました。 従来の手法では、中性子星のような超高密度環境におけるニュートロンや陽子の相互作用をシミュレーションするには膨大な計算資源と時間が必要であり、現実的な解を出すことが困難でした。しかし、チームが開発した人工知能ベースの枠組みは、核相互作用と中性子星の物理的特性をほぼ即座に関連付けることに成功しました。このシステムには、量子物理学の原理を学習したアルゴリズムと、大量のデータで訓練されたニューラルネットワークの二つが用いられ、高密度物質の性質を予測する高速な代替モデルとして機能しています。 研究チームは、2017 年に観測された連星中性子星合体に伴う重力波データ(GW170817)と、NASA の中性子星内部組成探査機(NICER)による X 線データという、異なる観測手段からの情報を組み合わせた「マルチメッセンジャー天文学」のアプローチを採用しました。これにより、中性子星の大きさや潮汐変形といった観測可能な性質から、原子核内で働く「強い力」、特に三つ以上の粒子が関与する「三体相互作用」の詳細な制約を引き出すことに成功しました。 ロサンゼルス国立研究所のインゴ・テウス氏は、この研究がマクロとミクロの分野を堅牢に結びつけた初の例であると評価しています。また、ダルムシュタット工科大学のイザック・スベンソン氏は、この手法が中性子星の観測から高密度物質内の相互作用を直接的に推定する新たな道を開いたと述べています。現在、この枠組みが導き出した制約は、地上の実験結果と整合性を持っており、将来設置が予定されている次世代検出器である欧州の「アインシュタイン・テレコ」や米国の「コズミック・エクスプローラー」からのデータが利用できれば、さらに高精度な解析が可能になると期待されています。この技術は、クォークやグルーオンといったエキゾチックな物質の相転移や、宇宙で最も密度の高い環境における物質の性質を理解する上で重要な役割を果たすことが予想されます。
