インサイトロ、コンビナブルAIを買収してフルスタックなモダリティに依存しないAIドラッグディスカバリー・プラットフォームを完成させる
インサイトロ(insitro)は、AIを活用した治療薬開発の新たな段階を築くために、イスラエルのバイオテック企業・コンビナブルAI(CombinAbleAI)を買収し、統合型AIプラットフォーム「TherML™(Therapeutic Machine Learning)」を発表した。この買収は2026年1月下旬に完了予定で、インサイトロが小分子、オリゴヌクレオチド、抗体、複雑なバイオロジカル製剤といったすべての治療モダリティに対応する「モダリティに依存しない」AI駆動型治療薬設計体制を完成させる重要な一歩となる。 インサイトロは、因果生物学(causal biology)に基づくAIプラットフォームを構築しており、疾患の発症・進行メカニズムをデータから解明し、標的遺伝子を特定・優先順位付け、治療薬設計までを統合的に実行している。今回の買収により、コンビナブルAIが持つ物理学に基づいたAIモデルが統合され、特に多特異性抗体やT細胞エンゲージャーといった複雑なバイオロジカル製剤の設計が飛躍的に強化される。このモデルは、10万以上の分子動力学シミュレーションの代替データ(surrogates)で事前学習されており、タンパク質の構造と柔軟性を高精度で予測できる。 従来の薬剤発見は、効果(ポテンシー)を最適化した後、製造可能性(developability)を評価するという順序だったが、TherML™は両者を同時に設計の前提に据える。これにより、高効果だが製造困難な候補が開発後期に脱落するリスクを大幅に削減できる。特に、薬物特性(ADMET)を予測する高度な機械学習モデルは、インサイトロの内部データと製薬企業との共同研究データを活用しており、結合親和性だけでなく、安定性、選択性、安全性も同時に最適化できる。 TherML™は、インサイトロの自動化ラボと直接連携しており、実験データが迅速に生成され、AIモデルの精度が継続的に向上する「フィードバックループ」を実現。これにより、個々の標的やモダリティに応じた柔軟な設計が可能となる。 コンビナブルAIの共同創業者であるノアム・カッツ博士は、「効果と製造可能性を同時に最適化することで、実世界で期待通りに機能する薬の開発を信頼性高く実現できる」と強調。同社は2023年にAIONラボ(イスラエル)のベンチャースタジオで設立され、メルク、アストラゼネカ、ファイザー、テバ、AWS、イスラエルバイオファンド、アミティ・ベンチャーズ、イスラエルイノベーション庁が共同で支援。AIONラボはAIと計算科学を融合した新薬開発のための「初のベンチャースタジオ」モデルとして注目されている。 今後、コンビナブルAIのチームはイスラエルに新たな研究開発拠点として存続し、大分子治療薬の設計をさらに進化させる。インサイトロは、代謝疾患と神経科学分野に注力しており、これまでに約8億ドルの資金調達と1億5000万ドルの非希薄化製薬パートナーシップを獲得。TherML™の登場により、AIを核とした「再現性・スケーラビリティ・予測可能性」を備えた、工業化された薬剤発見の新時代が幕を開ける。
