メモリ不足が中小テック企業に存続危機を強いる
人工知能(AI)の急速な発展を背景に、世界でDRAMを中心としたメモリ不足と価格高騰が深刻化している。この状況は、AppleやMicrosoftといった大手企業の価格改定を招くだけでなく、サプライチェーンに柔軟性を持たない中小企業にとって存続の危機となっている。 2024年に設立されたMono Technologiesの創業者Tomaž Zaman氏は、主力ルーター開発キットの部材コストが劇的に上昇している実態を明かす。同社が採用する8GBのDRAM調達価格は、開発当初の35米ドルから現在300米ドルへ大幅に値上がり。1,300人の予約客を抱える同社は、次期モデルの価格改定かメモリ容量の大幅削減で対応を迫られている。軍事通信機器を手がけるW5 TechnologiesのElaine Ferguson氏も、サーバー調達価格が2020年の5,373ドルから約1万5,000ドルへ跳ね上がり、納入遅延による契約履行の困難さに直面している。GoProも供給削減の影響で販売見通しを引き下げている。 一方、市場をリードする大手企業も例外ではない。AppleはTim Cook最高経営責任者(CEO)が「百年に一度の洪水」と表現した部材価格の高騰を受け、iPadやMacの一部で値上げを発表した。MicrosoftもXbox Series Sの価格を100ドル引き上げ、コンソールのメモリ・ストレージ価格が過去2.5倍以上に上昇し、2027年秋までにはさらなる倍増が見込まれると警告した。 AIチップメーカーが先進システム向けに膨大なメモリを消費している現状では、サプライヤーへの交渉力や資金力に恵まれない中小・中型企業は価格転嫁が困難で、インフレ経済下での収益圧迫が避けられない。業界ロビイストが米国商務省へ危機を伝える書簡が送られるなど、通信、医療機器、小売など各分野で広範な影響が拡大している。 メモリ不足がAI需要と従来の消費向け電子機器の需要で二重に逼迫する中、業界の再編とサプライチェーンの抜本的見直しが不可避となっている。中小企業の生き残り策として、製品ラインアップの再構築や資金調達が急務となっており、今後数ヶ月間の部品動向が業界全体の成長軌道を左右する鍵となりそうだ。
