素材にAI統合、学習型柔軟ロボット細胞を開発
物理AI分野は長年、アルゴリズムの高度化と刚性ハードウェアの統合に焦点が当てられてきた。2026年6月、ロンドンのスタートアップmorphは、素材自体に知能と応答性を埋め込む新パラダイムを提示し、業界の注目を集めた。同社が発表したソフトロボティックセルは、センサー、アクチュエーター、制御ユニットを統合した柔軟モジュールであり、環境や使用者の状態に応じて形状と剛性をリアルタイムで変化させることを可能にする。 創業者のジャン・ネメ氏は整形外科医出身であり、従来の静的な装具や素材の限界を解消する必要性から本プロジェクトを立ち上げた。従来の気動式や形状記憶合金を用いた軟体ロボットとは異なり、morphは構造体・知覚・駆動・制御を一体化させたスマート素材の構築に注力する。計算アーキテクチャは層別化されており、リアルタイム制御ループをエッジデバイスで実行して低遅延を確保し、モデル訓練とシステム更新のみをクラウドに委ねる。強化学習と高精度な物理シミュレーションを組み合わせるsim-to-realの開発手法で、検証サイクルを加速させている。 市場参入戦略としては、スポーツ支援やケガ予防、行動補助といった消費財・産業分野から着手し、技術検証と事業モデルの確立を図る。将来的な医療機器への展開を見据え、FDAのAI医療ソフト向け予備変更管理計画ガイドラインを活用し、有界学習による規制対応を可能にする。事業形態はB2Bに特化し、他社製品へのセル埋め込みや設計基盤の提供を主な収益源とする。8VCなどからの支援を受け、具体的な調達額は非公開。 morphの登場は、物理AIの進化が脳に偏る中で無視されてきた材料層の空白を埋める試みである。素材自体が知能を持ち環境に適応できる技術が実用化されれば、非構造化環境でのロボット操作や、人間との安全な物理インタラクションは根本的に変容する可能性がある。
