AIが病理医の視覚的判断を再現、乳腺がん組織解析の精度を飛躍的に向上
メイン州立大学の博士課程学生2人が開発した人工知能(AI)システム「Context-Guided Segmentation Network(CGS-Net)」が、乳がん組織の病理診断の精度を向上させる可能性を示した。このAIは、人間の病理医が組織スライドを検査する際の「局所的細部」と「広い組織的文脈」の両方を同時に分析する方法を模倣しており、従来の単一入力型AIモデルを上回る性能を発揮した。主に電気工学の博士課程に在籍するジェレミー・ジューバリ氏と、生物医工学の同課程のジョシュ・ハミルトン氏が中心となり、アンドレ・カヒル、イフェン・ジュ、チャオファン・チェンら教員と共同で研究を進め、論文を『Scientific Reports』に発表した。 乳がんは女性におけるがん死因の第2位で、生涯に1人あたり8人に1人が罹患する。現在の診断は、化学染色された組織スライドを顕微鏡で検査するという手作業に依存しており、専門知識と時間がかかる。世界の病理医の約2/3が10カ国に集中しており、インドなどでは診断の遅れが治療可能なリスク要因と重なり、予防可能な死亡が増加している。 CGS-Netは、高解像度の細胞レベル画像と、周辺組織を含む低解像度の広域画像の2つの入力を同時に処理する二重エンコーダー構造を採用。両画像は同一の中心ピクセルを共有し、正確な位置合わせを実現。この構造により、AIは「どこに癌があるか」だけでなく、「その周囲の組織構造が異常かどうか」を包括的に判断できる。研究チームは383枚のリンパ節組織スライドを用いて訓練し、癌組織と正常組織の分類において従来モデルを上回る精度を達成した。 この研究は、AIが人間の専門家と協働する「補完的」な存在であることを示しており、今後の応用では多解像度や多モーダルデータ(画像・遺伝子情報など)の統合、他のがん種への拡張が期待される。また、データとコードは公開されており、国際的な研究連携を促進する。この取り組みは、医療の格差解消と、デジタル病理診断の質の向上に貢献する可能性を秘めている。
