OpenAI、NYTimesにユーザーログ開示を求める訴訟で敗訴へ
OpenAIがニューヨーク・タイムズ(NYTimes)に対して、ユーザーのChatGPT利用ログ2000万件の開示を求める動きを「プライバシー侵害」と批判したが、その主張はすでに裁判所で退けられている。同社は11月7日にマガジネート法廷裁判官のオンア・ワン氏が、ログの開示を「適切」と判断したことを無視した形で、自身のプライバシー保護を訴える声明を発表した。声明は、同社の情報セキュリティ責任者ダン・スタッキー氏が執筆し、「ニューヨーク・タイムズによるユーザーのプライバシー侵害への抵抗」と題されている。スタッキー氏は、新聞社が訴訟の証拠開示プロセスでログを要求することは「長年のプライバシー保護の原則に反する」と非難した。 しかし、実際にはワン裁判官は、OpenAIがログの個人情報抽出(デイデンティフィケーション)を徹底的に行い、訴訟に参加する弁護士らがインターネット未接続の部屋で厳重なセキュリティ下で審査を行うなど、十分な保護措置が講じられていると判断。その上で、ユーザーのプライバシーは既に十分に守られているとして、ログの開示を命じた。OpenAIはその後、再審を求める申し立てを行ったが、理由として「一般的な常識や連邦規則では、大量の個人的会話の強制開示が正当化されない」と主張。しかし、裁判所はその主張を認めなかった。 NYTimesは2023年、OpenAIとマイクロソフトを相手に提訴。同社のニュース記事がAI学習データとして使用されたとして、著作権侵害を訴えている。訴訟の目的は、ChatGPTが自社の報道内容を模倣して回答しているかどうかを検証するため、ログの一部を分析すること。同社は、開示されたログの一部を分析することで、AIの出力が自社のコンテンツに依存しているかを検証したいとしている。 OpenAIは、この訴訟がAI業界全体の法的前例を形成する重要な案件であると認識しており、同社のCEOサム・アルトマン氏も6月、NYTimes記者のケビン・ルーズ氏との対談で「ユーザーのプライバシーを守る立場で訴訟を起こすのか」と問うなど、公の場で反発を示している。一方、Axel Springer(Business Insiderの所有者)はOpenAIとコンテンツライセンス契約を結んでおり、同社の立場は複雑な状況にある。 結論として、OpenAIは公の場で「プライバシー保護」を訴えているが、実際には裁判所が開示を認めた上で、既に十分な保護措置が講じられていると判断している。この事件は、AI開発企業とメディアの間の法的・倫理的対立の現状を象徴している。
