AIが水の構造を制御して蛋白質を強化——表面電荷設計で「hydration shield」を創出
人工知能(AI)がタンパク質の安定性を「水」の構造制御によって飛躍的に向上させることに成功した。台湾中央研究院・国立台湾大学の呉坤鵬博士率いる研究チームは、AIによるタンパク質再設計技術を用いて、ユビキチン折りたたみ構造をもつタンパク質の表面電荷を最適化。これにより、周囲の水分子が高度に秩序立った「ミクロ構造化水膜(mesostructured hydration shell)」を形成し、タンパク質の立体構造を守る「水のシールド」を構築した。この成果は、『Journal of the American Chemical Society』に発表された。 従来のタンパク質設計では、内部の疎水性コアを強化することで安定性を高めるのが主流だったが、今回の研究ではAIツール「ProteinMPNN」と「AlphaFold」を活用した設計により、表面電荷のパターンを再構築。その結果、R4、R10、ICVといったAI設計タンパク質は、120℃以上の高温や、pH3と8M尿素という極端な化学的ストレスにも耐え、構造と機能を保持した。 NMR分光法と分子動力学シミュレーションを組み合わせた解析から、この安定性の正体は「水の秩序化」にあることが明らかになった。AIはタンパク質表面の電荷を精密に配置し、周囲の水分子が規則的なネットワークを形成するように誘導。この「水のシールド」が熱や化学物質による変性を緩和し、折りたたみ構造の崩壊を防ぐ。 研究チームは、「水を呼吸する」というファンタジー的な表現を否定し、実際には「設計可能な物理化学現象」であると指摘。「表面の電荷配列を制御することで、水の秩序をAIが設計可能になる」と強調。この発見は、タンパク質設計の新たな原則を示すもので、従来の「乾燥したコア」強化に加え、「湿った外側」、すなわち水との界面を制御するアプローチが可能になる。 呉坤鵬教授(責任著者)は、「AIの最適化がかつてのブラックボックスだったが、今や測定可能な物理化学に基づく設計原理に変貌した」と述べ、抗体医薬品など長期間安定性が求められる医療応用への応用可能性を示唆。今後、タンパク質の設計・安定化・保存技術が、この「構造化水膜」の制御によって根本的に進化する可能性がある。
