脳が書き換わり真のマルチタスクを実現
ジョージタウン大学研究チームは、反復練習による脳の神経回路再構築が真のマルチタスクを可能にするメカニズムを解明した。この発見は、人間の脳が複数の作業を同時に処理できないとの従来の通説に異議を唱えるものである。同大学医学部神経科学教授のマキシミリアン・リーゼンフュルダー氏らのチームは、5週間から10週間にわたり約3万回の画像分類課題を実施した被験者の脳をfMRIおよびEEGで計測し、学習の過程で神経活動が前頭前皮質から側頭皮質へ移行することを証明した。課題初期には意識的な判断を司る前頭前皮質が強く活性化されていたが、熟練により側頭皮質が対象カテゴリーを自動識別する領域へと特化。これにより処理情報が前頭前皮質を迂回して運動出力領域へ直結し、認知負荷が解放される。その結果、被験者は追加課題を並行して遂行する能力が顕著に向上し、脳が実際の二重作業を処理できることが実証された。 本研究は6月4日付でJournal of Cognitive Neuroscienceに掲載された。専門家は本知見が、ルーチン化された行動が意識的な制御から離脱するメカニズムを解明し、悪習の克服戦略に新たな視点を提供すると指摘する。また、既存の知識を側頭皮質へ移管することで前頭前皮質を新規学習に再利用する脳のメカニズムは、継続的学習において過去の知識を破壊しがちな現在の人工知能システムにも示唆を与える。人間の脳が生涯にわたり新しい能力を構築できる理由の一端を解明するものである。 今後チームは、学習遷移を担う神経信号の特定や、並列処理が可能となる課題の条件解明を計画している。リーゼンフュルダー氏は、異なる神経回路を訓練することで真の並列処理が実現可能だが、視覚や注意資源を競合する複雑なタスクには適用できないと強調。本研究は米国科学財団(NSF)および陸軍研究所(ARL)の支援により実施された。
