細胞の配列が傷の治癒速度の違いを説明
ブリストル大学の研究者らは、数学モデルの開発により傷の治癒メカニズム解明に新たな一歩を踏み出しました。この研究は「物理レビューレターズ」に掲載され、果実を用いた上皮細胞の動きの観察に基づいています。傷治癒において重要な再上皮化は、皮膚細胞が広がり外層バリアを再構築する過程ですが、このプロセスが阻害されると感染リスクが高まります。 研究チームは深層学習を用いて数千の細胞を分析し、果実の翅にある細胞が頭と尾の対称性を持ち、翅の長軸に沿って整列している事実に着目しました。この観察結果を基に開発された新モデルは、組織を細長い粒子が整列した流体として扱い、周囲の「バルク」と呼ばれる力に注目しました。モデルは、傷口が丸い状態から閉じる過程で、周囲組織の自然な方向に沿って歪み、伸びたり潰されたりする可能性を示唆しました。 実験データとの照合により、この予測が正確であることが確認されました。論文共著者のヘンリー・アンドラロジェク博士は、これまでに機械的モデルで無視されていた周囲組織が生成する力の重要性と、実験データに基づいたモデル構築のための学際的協力が必要不可欠であることを強調しました。もう一人の共著者であるタニームロラ・リバプール教授は、周囲組織が内向きに引っ張れば治癒は加速し、外向きに押せば遅延すると説明しています。このモデルは、細胞配列の秩序が傷の閉鎖時に一時的な乱れを起こしても、最終的には消失し秩序が回復することを示しています。この知見は、治癒速度の違いが生じる物理的要因を明らかにし、将来の創傷治療への応用が期待されます。
