AIがRNAワクチンの常温保存を実現
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、人工知能(AI)を活用してRNAワクチンの脂質ナノ粒子(LNP)の耐熱性を大幅に向上させることに成功した。この手法により、従来の超低温保存に依存していたRNAワクチンの保管・輸送コストを削減し、広範な地域への普及を可能にする画期的な進展となる。 RNA分子は本来脆弱であり、LNPに包まれている必要があるが、従来通りでは零下20〜80度の冷蔵環境が不可欠だった。MITの科赫研究所所属アナ・ジャクレネツ教授とロバート・ラング教授らのチームは、FDA承認済み添加剤約50種を対象にAIアルゴリズムを用いて最適な配合を探索した。従来の試行錯誤法では数ヶ月を要するところ、わずか数回のイテレーションで最適解に収束。データセットが小さくても高精度に予測可能である点が同アルゴリズムの強みだった。 研究チームは、同手法で最適化されたLNPに新型コロナウイルスのmRNA抗原を封入し、真空乾燥処理を施した。その結果、室温で1年間、または約37.8度で2ヶ月保存しても、ワクチンの構造と機能は維持された。マウスを用いた動物実験では、Moderna系ワクチンと同レベルの強力な免疫反応が確認されている。さらに、同製剤は皮膚に貼って投与する微針パッチへの転用も可能であり、従来不可能だった非侵襲型ワクチン開発の道を開いた。 本研究成果は学術誌Nature Biotechnologyに掲載され、Gates Foundationから一部資金提供を受けている。チームは本AIプラットフォームがPfizer系LNP他、任意のmRNAカゴや制御放出製剤の安定化にも応用可能であると指摘。冷蔵インフラが整わない地域におけるワクチンアクセスの拡大、および次世代ドラッグデリバリーシステムの実現に寄与すると期待されている。
