中国がAI規制のリーダーを目指す、WAICO提言の狙いと世界への影響
中国は人工知能(AI)の国際的規制において主導権を握ろうとしている。2025年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、習近平国家主席は「世界人工知能協力機構(WAICO)」の設立を提唱し、各国が協力してAIのグローバルガバナンスを構築する道筋を示した。この提言は、AIのリスク——格差の拡大や存在的危機——を管理するための国際的枠組みの必要性に応えるもので、中国が規制の主導者としての立場を強化しようとする戦略の一環だ。 中国は2022年からAI専門の規制を導入し、有害なコンテンツ、個人情報、データセキュリティに配慮した包括的なルールを設けている。公共のAIサービスは導入前に中国当局による審査を受ける必要があり、DeepSeekのR1モデルなどは「世界で最も規制が厳しいAIモデル」の一つとされる。一方、実際の執行は柔軟で、過度な規制強化を避けている点が特徴だ。これに対し、米国は連邦レベルのAI法がなく、トランプ政権はAI安全を目的とした大統領令を廃止。企業優先の政策を掲げ、州レベルの規制を阻止しようとしている。EUはリスクレベルに応じた分類制を導入し、8月に強力なAIシステムに向けた義務が発効。英国は法整備を来年以降に延期している。 国際的な法的枠組みは限られている。欧州委員会(Council of Europe)が2024年5月に採択した「AI枠組み条約」が唯一の法的拘束力を持つ国際条約だが、制裁や強制力を持たない。UNやUNESCO、OECD、Bletchley宣言など、非拘束的合意は多数存在するが、実効性に課題がある。 WAICOは、各国の政策差を尊重しつつ、グローバルサウスの声を代表する形で、AIガバナンスの協調の場を提供する。中国は上海に本部を置くことを提案。直接的な規制力は持たないが、国際基準の策定に影響を与える可能性がある。専門家は、中国が規制の「ルールメーカー」になることで、自国製AIの世界展開を促進し、外交的影響力も拡大できると指摘する。中国の提言は、4か月間で4回にわたり繰り返されており、戦略的意図が明確だ。AIの未来を巡る国際競争は、技術力だけでなく、規制の主導権をめぐる戦いへと進んでいる。
