AIが臨床ノート解析で潰瘍性大腸炎関連大腸がんのリスクを予測
溃疡性大腸炎(UC)を有する患者は、一般人口に比べて大腸がんの発症リスクが最大4倍に上る。その中でも、低悪性度異形成(LGD)はがんへの前駆病変として注目されるが、LGDの多くはがんに進行しない。このため、臨床現場では「経過観察」か「予防的手術」かといった意思決定が難しくなっている。こうした課題を解決するため、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームが、人工知能(AI)とバイオ統計モデルを組み合わせた新しい予測手法を開発した。その成果は2月17日、『Clinical Gastroenterology and Hepatology』に掲載された。 研究チームは、米国退役軍人局(VA)の医療システムに蓄積された5万5000人の患者データを対象に、AIによる完全自動化ワークフローを構築。内視鏡検査記録や病理報告書など、記述形式の臨床ノートからLGD患者を抽出し、個々のがんリスクを評価した。このデータセットは米国で最大規模のものである。 Kit Curtius博士(UCSD医学部バイオメディカル情報学専攻、ムールズがんセンター所属)によると、「大規模言語モデルは、臨床ノートの中からLGDの大きさ、複数病変の有無、重度の炎症といったがんリスク要因を正確に抽出できた」と述べている。AIと統計モデルの統合により、臨床現場で即時に利用可能なリスクスコアが得られ、医師と患者の意思決定を支援できる。 「現在のリスク評価は主観的で、医師がデータに基づいた数値を提示できないのが実情です。AIは診察中に患者のリスクスコアを即座に提示でき、意思決定の質を飛躍的に向上させます」とCurtius氏は強調する。また、リスクが高い患者を自動で検出することで、後続の内視鏡検査の遅延を防ぎ、早期発見につながる可能性もある。 今後の課題として、VA以外の患者集団での検証、遺伝子情報などの新たなリスク因子の統合が挙げられている。Curtius氏は「遺伝子情報ががん進行に大きく関与していることは明らかです」と述べ、今後の研究の方向性を示している。 このAI技術は、慢性炎症性腸疾患患者の個別化医療を実現する一歩となる可能性を秘めている。
