AIがプラトンの数学パズルに「即興で対応」——ChatGPT、記憶ではなく思考風に解釈
英国ケンブリッジ大学の教育研究者、ナダブ・マルコ博士(ヘブライ大学・ヤエルン教育学院所属)とアンドレアス・スティリアニデス教授による実験で、ChatGPT-4が古代ギリシャの数学パズル「正方形の面積を2倍する問題」に挑戦した結果、予想外の反応を示した。この問題はプラトンが紀元前385年頃の『メノン』で取り上げたもので、知識が内面に潜在しているのか、それとも経験から生成されるのかという哲学的議論の出発点とされている。 研究チームは、ChatGPTにソクラテスの問いかけスタイルを模倣させ、その後誤りや変則的な問題を提示してみた。期待されたのは、プラトンの古典的な幾何学的解法を記憶から再現することだったが、ChatGPTは代わりに当時では存在しなかった代数的手法を用いて解こうとした。さらに、研究者が「この答えは近似値で、正確ではない」と指摘しても、ChatGPTは当初、代数的アプローチを堅持。研究者が「正確で洗練された解法がほしい」と述べた後、初めて幾何学的な解を提示した。 この行動は、単なる記憶の再生ではなく、状況に応じて仮説を立て、試行錯誤する「学習者らしい振る舞い」に近いと研究者らは評価。マルコ博士は「新しい問題に直面したとき、人間は経験に基づいて試行する。ChatGPTもそれに似た動きを見せた」と指摘。ただし、幾何学的推論が苦手な点(図形の理解が弱い)も明らかになった。また、長方形の面積を比例保持して2倍するという変則問題では、研究者が幾何学的解を望んでいることを伝えても、ChatGPTは「対角線では面積を2倍できない」と誤った主張を繰り返した。 研究チームは、結果を過剰に解釈すべきではないとしながらも、AIが「記憶の再現」と「即時的な推論」の両方を併せ持つ可能性を示唆。AIが生成する証明は、教科書のものとは異なり、常に正当性を検証する必要があると強調。スティリアニデス教授は「AIに『答えを教えて』ではなく、『一緒にこの問題を探究しよう』と促すプロンプトが重要だ」と提言。 この研究は『国際数学教育科学技術ジャーナル』に掲載された。AIが数学的思考を模倣する能力の限界と可能性を明らかにした、教育現場におけるAI活用の新たな視点を提供している。
