AIと物理が水素貯蔵材料の設計図を構築
東北大学を中心とする研究チームは、水素貯蔵材料の開発を加速させるためのAI駆動設計指針を構築した。同成果は学術誌Chemical Scienceで発表された。本研究は、科学文献から収集した水素貯蔵測定データを整理したデータベースDigHydと、人間が理解可能な数式を探索する記号回帰ツールGoodRegressorを組み合わせることで、間隙型金属水素化物の性能を支配する物理因子を解明するものとなっている。 再生可能エネルギーの貯蔵媒体として水素が注目される中、固体内に水素を吸収・放出する金属水素化物の実用化には、貯蔵容量と平衡圧力のトレードオフという課題があった。研究チームはAI分析により、この二つの特性が独立的に異なる材料因子によって制御されていることを明らかにした。水素容量は金属原子の平均半径および格子の柔らかさや熱伝導率と強く相関し、格子が軟らかく原子サイズが最適化された材料で最大化される。一方、室温での吸収・放出平衡圧力は、格子の剛性と変形性を表す弾性特性によって支配されることが判明した。 この発見により、容量を高めるためには幾何学的構造と格子柔軟性を調整し、実用上必要な約1気圧の平衡圧力を維持するには弾性定数を精密に制御する必要があるという設計ブループリントが確立された。チームは本フレームワークに基づき、BCC合金やラベス相、LaNi5型、TiFe型などの主要な間隙型水素化物クラスに対して、組成を変更する具体的な合成経路を提案している。東北大学のHao Li教授は、本モデルが特定の物理的特性が重要となるメカニズムを説明するため論理的な材料設計に直結すると指摘。また、Seong-Hoon Jang助教は、新規材料は実験的検証が必要だが、本アプローチが探索範囲を大幅に絞り試行錯誤を削減する説明可能な設計指針を提供すると述べている。 同手法は、イオン型水素化物や水素化物ベースの固体電解質など、他のエネルギー関連材料の開発にも応用可能と期待されている。AIと物理学の知見を統合したデータ駆動型アプローチは、次世代グリーンエネルギー貯蔵技術の実用化を加速させる重要な基盤となる。
