AIががん組織画像を高速解析、腫瘍の異質性を空間的に解明し治療の個別化へ
英国ケンブリッジ大学の研究チームが、がんの組織画像を高速かつ高精度に解析できる人工知能(AI)ツール「SMMILe」を開発した。このAIは、生検や手術で得られた組織スライドからがん細胞の存在を検出し、腫瘍の位置や、異なる悪性度を持つ領域の割合・分布まで詳細にマッピングできる。従来のAIでは、病理医による細部まで注釈された高品質なスライドが必要だったが、SMMILeは「がんの種類や段階」などの患者レベルの簡易ラベルだけで学習可能で、時間とコストを大幅に削減できる。 研究では、肺、腎臓、卵巣、乳腺、胃、前立腺の6種類のがん計3,850枚のスライドを用いて検証。SMMILeは、9つの最先端AIツールと比較してもスライド分類の精度で同等以上であり、特に腫瘍のサブタイプや悪性度の割合・空間分布を推定する点で顕著に優れていた。 開発を主導したケンブリッジ大学早期がん研究所の高哲宇博士は、「がんは均一ではなく、一つの腫瘍内に異なるタイプが混在する。SMMILeは『がんあり』という単純な判定を超えて、個々の腫瘍の複雑な構造を可視化できる。これにより、患者ごとの治療をより的確にカスタマイズできる」と説明。同研究の共同上級著者であるMireia Crispin-Ortuzar博士は、「これは『暗闇の中のソナー』のようなもの。従来は分布が不明な領域も、AIで正確にマッピングできる」と評価。 今後は、SMMILeを用いてがんの分子レベルのバイオマーカー(生物的シグネチャー)を予測し、形態と生物学的特性の両面から個別化医療を推進する計画。研究はがん研究UKとGEヘルスケアの支援を受けており、今後は臨床現場での実用化に向けた検証が求められる。同大学とアドンブロウス病院は、AIを活用したがん診断・治療の新拠点「ケンブリッジがん研究病院」の建設を募金中。AIの進化が、がん患者の早期診断と個別化治療の実現に大きく貢献する可能性が示された。
