元Amazon従業員がAIスタートアップを創業、Big Techの思考を捨てるまで
アンドレ・ラツィラソン氏(37歳)とシャリニ・アガワル氏(50歳)は、それぞれ異なる時期にアマゾンを退職し、その後再会してAIスタートアップ「テナフラ」を共同創業した。アガワル氏はインドから米国に移住後、2015年にアマゾンでプロダクトとプロジェクト実行を担当。ラツィラソン氏は2014年にアマゾンに入社し、エンジニアとして働きながら起業志向を育てていた。2023年に再び退職後、彼は複数の起業試みを経て、アガワル氏のLinkedInでの活動に注目し、再びつながりを持つことになった。 二人はアマゾン時代に慣れ親しんだ「作りながら顧客ニーズを確認する」というアプローチを、スタートアップではまったく通用しないことに気づいた。特に、製品開発後にユーザーが現れないという現実が、彼らに大きな衝撃を与えた。これにより、製品開発前に顧客インタビューを実施し、待機リストやコミュニティでのテストを通じて需要を検証するプロセスを導入した。 また、アマゾンのような大手企業ではインフラや資金が潤沢だったが、スタートアップではコスト管理が命題となった。AWSのクレジットを初期に使いすぎ、予想外のコストが発生したことで、予算アラートの導入やテスト時のリソース停止チェック体制を構築。さらに、クラウド利用を最小限に抑え、ローカルサーバーを導入して実験を実施することでコスト削減を実現した。 AIの活用により、研究資料の読み込みや情報整理の時間が大幅に削減され、顧客との対話や業界イベントへの参加に時間を割けるようになった。また、AIがコード生成やUI設計の初期プロトタイプをサポートすることで、エンジニア数を最小限に抑えながらプロダクト開発を進められるようになった。 二人のアマゾン経験は、スケーラブルなプロセス設計に役立った一方で、「インフラは常に使える」という思い込みがエネルギーの無駄につながっていた。特に、完成度の高い製品を出さなければユーザーが離れるという懸念から、初期段階での「完璧主義」を克服するまで時間がかかった。 彼らが得た教訓は一つだ。「ユーザーとの対話を先にし、本当に必要なものを最小限に作る」ことが、スタートアップ成功の鍵である。AIの進化が、起業のハードルを大きく下げた今、彼らの経験は、大手企業から独立する起業家にとっての実践的指針となっている。
