利益を上げる企業はAIを活用して従業員体験を向上させる可能性が7%高いことが調査で判明。
人工知能(AI)がビジネスのあり方を根本から変える中、新たなリーダーシップのあり方が登場している。トップエムロイアーズインスティテュート(Top Employers Institute)が発表した調査レポート『AIパワードリーダーシップ:人間の知見と知能技術を統合するためのブループリント』は、AIを活用して人間の可能性を拡張し、従業員体験を向上させるリーダーの重要性を強調している。この調査は、125カ国・26業界にまたがる2,300以上の企業から得られた匿名データを基に、AIの導入と企業の業績、従業員エンゲージメント、昇進率との関係を統計的に分析したものだ。 調査の主要な発見として、利益を上げている企業は、業績が低い企業に比べてAIを従業員体験の向上に活用する確率が7%高いことが明らかになった。これは、AIを単なる効率化ツールではなく、人間の判断力や共感力、目的意識を強化する「補完的」な存在として捉える「人間中心のリーダーシップ」の重要性を示している。しかし、現実にはAIの導入がリーダーシップの成熟を追い越している。世界中で78%の企業が少なくとも1つの業務分野でAIを導入しているものの、その潜在能力を組織全体に広く実現できているのは少数にとどまる。 トップエムロイアーズインスティテュートのエグゼクティブボードメンバー、アドリアン・セリグマン氏は、「AIは組織の構造をリーダーの適応速度よりも速く変えており、成功するリーダーは、技術が判断力、共感、目的意識を強化する仕組みを設計できる人だ」と指摘。また、ボストンコンサルティンググループの調査によると、74%の企業がAIの潜在能力を実際の組織的価値に変えることに困難を感じていることも明らかになった。 こうした課題に対応するため、レポートはAIパワードリーダーの5つの柱を提示している。それは、デジタルへの自信、倫理的責任、人間中心の設計、システム的意識、そして実践的な共感力だ。これらのリーダーは、AIを「人間の能力を補完する」手段として活用し、意思決定の根幹に人間の価値を据える。 特に注目すべきは、HRリーダーの役割の変化だ。セリグマン氏は「HRリーダーはこの変化の触媒となり、経営陣や取締役会にAIを人間の可能性を高める手段として活用するよう促す責任がある」と強調。AIを活用するが、リーダーシップの本質を変える努力がなければ、古い基盤の上に高速なシステムを構築するにすぎず、成長の可能性を損なうと警告している。 このレポートは分析にとどまらず、実践的なステップを提示。企業がAIをリーダーシップの強化に転換するための具体的なガイドラインを提供している。AI時代のリーダーシップは、技術の導入ではなく、人間と技術の調和をいかに設計できるかにかかっている。
