物理情報AIが徐放性薬物パッチ開発を加速
ブラウン大学は、制御放出型ドラッグデリバリーシステムの開発期間を大幅に短縮する新たな人工知能手法を開発した。工学部助教授ヴィカス・スリヴァスタヴァ氏らが主導する同チームは、物理学情報ニューラルネットワーク(PINN)を活用し、医療パッチや包帯、インプラントに用いられる材料からの薬剤放出速率を高精度に予測するモデルを構築した。本研究成果は学術誌Journal of Drug Delivery Science and Technologyの2026年刊行物に掲載された。 従来の放出材料開発は試行錯誤を伴う実験プロセスに依存しており、多大な時間と費用を要していた。同チームは、ブラウン大学の数学教授ジョージ・カルニアダキス氏により開発されたPINNの枠組みを応用し、分子拡散の基礎法則であるフィックの拡散法則をモデルに組み込んだ。これにより膨大な学習データに依存する従来のAIとは異なり、少量のデータからでも正確な長期放出挙動を予測可能にした。平坦な構造の材料では実験データのわずか6%、複雑な皺や折りたたみを持つ材料でも33%のデータで実測値と一致する予測結果を出力することに成功した。 スリヴァスタヴァ氏によると、本手法により材料評価に必要な実験時間を単純材料で94%、複雑材料で67%削減できる。さらにモデルの出力精度向上のため、実験データの不確実性やノイズを定量評価できるベイズ統計を組み合わせたPINNも併用されている。これにより実測結果のばらつきを考慮したより精密な予測が可能となった。 対象技術は外部使用のパッチや包帯に限定されず、経口薬を含むあらゆる制御放出システムへ拡張適用が可能であるとチームは指摘する。時間と費用が問われる製薬開発において、本手法は新薬デリバリー製品の患者への提供を加速し、開発コストを大幅に削減する有望な技術として期待されている。
