AIで実現した1000億星の銀河シミュレーション、スーパーコンピュータで115日で10億年分を再現
理化学研究所(RIKEN)の平島敬也氏らの研究チームが、世界初となる1000億個以上の個別星を追跡できる銀河系シミュレーションを完成させた。東京大学、スペインバセロナ大学と共同で開発したこのモデルは、1万年分の銀河進化を高精度で再現。従来の最高水準のシミュレーションに比べ、星の数が100倍、計算速度は100倍以上に向上した。この成果は国際スーパーコンピューティング会議SC '25で発表され、天体物理学と高性能計算の分野で大きな進展と評価されている。 従来の銀河シミュレーションは、100億個の星を模擬する規模に達しておらず、最小単位が100個の星をまとめて扱うため、個々の星の挙動や小規模な現象(例:超新星爆発)の正確な再現が難しかった。また、時間分解能を高めるには計算ステップを細かくする必要があり、現行の物理モデルでは100万年分のシミュレーションに315時間、10億年分では36年以上の実時間が必要となるという課題があった。 この課題を克服するために、研究チームは深層学習(AI)を用いた「サロゲートモデル」を導入。超新星爆発後のガスの拡散を、高解像度のシミュレーションデータで学習させ、本体の計算負荷を大幅に軽減。AIが爆発後の物理現象を予測することで、個別星の詳細を保持しつつ、100万年分のシミュレーションをわずか2.78時間で完了。10億年分も約115日で実現可能となった。 この手法は、気候変動や気象、海洋循環など、小規模な物理現象と大規模なシステムを結びつける分野にも応用可能。平島氏は「AIと高性能計算の融合は、単なるパターン認識から科学的発見のツールへと進化している」と強調。銀河内の元素生成過程や生命の起源に関する理解を深める新たな道を開くと期待されている。
