ドゥドナ氏チーム、AI設計で天然を上回る遺伝子編集タンパク質開発
ノーベル化学賞受賞者のジェニファー・ダウドナ教授らは7月16日、米科学誌Scienceにて人工知能(AI)設計の新規遺伝子編集タンパク質SynTnpBの研究を発表した。天然酵素の模倣にとどまらず、AIが複雑な酵素機能を独自に実装した点で注目を集める。 チームはCRISPRシステム由来の小型タンパク質TnpBを対象に、MetaのモデルESM-IF1を用いた設計を試みた。複合構造域を持つ酵素の設計難題を解決するため、天然配列の保存性と共進化情報を制約条件とし、DNA認識域と触媒域を分けて独立最適化する戦略を採用。1,980種の変異体を生成し、活性の高い候補を選定した。 人間細胞および植物細胞での評価結果、SynTnpB変異体は天然タンパク質に対し最大3.8倍の編集効率を示した。クライオ電子顕微鏡による構造解析では、AIが導入した新規残基がRNA-DNA複合体を安定化させ、触媒機構を最適化する新たな分子相互作用を形成していることが原子レベルで証明された。核酸情報を学習していないモデルが、構造情報から機能維持に必要な配列制約を自律的に発見した点は、大規模言語モデルの内部表現解明にも寄与する。 実用面では、従来の主要酵素SpCas9がアデノ随伴ウイルス(AAV)の搬送容量限界に近づいている中、SynTnpBは約1.2kbとコンパクトでベクター収載が容易である。ダウドナ教授の産学連携ネットワークと相まり、本AI設計酵素は遺伝子治療・農業分野への応用が加速し、天然探索からAI創薬への技術転換を促進すると期待される。
