大型言語モデルがクリーンエネルギー触媒を開発
東北大学WPI-AIMRの李浩特任教授らを座長とする国際共同研究チームは、大規模言語モデルと高速実験プラットフォームを統合した協調フレームワーク「ChatHEA」を開発し、燃料電池用高性能触媒の探索プロセスを大幅に加速させた。多元素から構成される高エントロピー合金の触媒特性は予測が困難であり、従来の試行錯誤に依存した開発では時間とコストがかさんでいた。本研究では、ChatHEAが科学文献からの知識抽出、元素組み合わせの設計、実験計画の立案、データ処理、および機構分析までを支援するドメイン特化型AIアシスタントとして機能し、研究ワークフロー全体を最適化した。 チームは本フレームワークを用いて100種類以上の五元素高エントロピー合金を高速合成・評価した。その結果、触媒活性は単一元素の性質ではなく、Fe-Co-CuやPt-Irなど多元素間のシナジー効果によって決定されることが明らかになった。特にFeCoCuPtIr系合金は、理論計算と微視的反応速度論モデルにより、活性サイトの電子構造が最適化され反応中間体の吸着強度が向上していることを確認した。電気化学試験および燃料電池デバイス評価において、市販の白金黒触媒を凌駕する酸素還元活性と耐久性を発揮し、最大出力密度0.789 W cm⁻²を達成。米エネルギー省が定める燃料電池の最低活性基準も超過した。 本成果は、複雑な組成空間を持つ新材料の探索にAI駆動型戦略が有効であることを実証した。ChatHEAを活用したこのアプローチは、貴金属使用量の削減と触媒コストの低減を可能にし、水素燃料電池自動車や再生可能エネルギー貯蔵システム、脱炭素インフラの実用化に寄与する見込みである。研究の詳細は学術誌「National Science Review」2026年版に掲載された。
