AIツールが血栓リスク関連の生体プロファイルを同定
サントパウ研究所と希少疾病医療研究ネットワークセンターの研究チームは、血栓症のリスクに関連するバイオロジカルプロファイルを特定する人工知能ツールを開発した。本研究は学術誌Journal of Thrombosis and Haemostasisに掲載され、臨床データ、遺伝子変異、トランスクリプトーム情報を統合する機械学習手法により、従来のリスク評価を大幅に上回る精度を実現したと発表している。 静脈血栓塞栓症は心血管疾患の主要因の一つだが、明確な引き金がない特発性症例が多く、従来の臨床因子のみでは個人差の六十パーセント以上を占める遺伝的要因の全貌を解明しきれない課題があった。研究チームは、家族歴を持つ七百九十人を対象としたGAIT2コホートデータを用い、一万二千九百八十一遺伝子の発現プロファイルと臨床・遺伝子情報を統合した。その結果、フォンウィレブランド因子やBMI、年齢などの既知マーカーに加え、四百九十四の新規遺伝子、特に長鎖非コードRNAなど、疾患に関連する分子シグナルを同定した。 本研究の最大の成果は、多変量統合モデルにより健康無症候者における高リスク誤分類が四十三パーセントから二十三パーセントに低下し、実際の患者検出率が七十パーセントから七十四パーセントに向上した点である。研究主任のホセ・マヌエル・ソリア博士と第一著者のポール・エスクエルラ博士は、遺伝子発現情報を付加することで臨床像が類似しても分子レベルで異なるリスクプロファイルを精密に判別できると強調する。さらに心筋症や腎臓近位尿細管機能に関連する既存の病態パスウェイがモデル内で検出され、生物学的妥当性も裏付けられた。 開発された類似度スコアは、既往歴のない人物のプロファイルが血栓症患者と分子レベルでどの程度一致するかを定量評価するものであり、個別化予防医学への応用が期待される。研究チームは今後独立コホートでの外部検証を経て臨床実装を目指すとしており、本ツールの実用化は血栓症リスク層別化の新しい標準となり、患者ごとに最適化された予防策の実現に寄与すると期待されている。
