ユタ州AI処方箋更新に医師警戒
Utah州で今年1月に稼働したAIチャットボット「Doctronic」による処方箋自動更新プログラムが、医療界に重大な論争を呼んでいる。同プログラムは患者が医師の診察なしにオンラインで処方箋を更新できる仕組みだが、現状の法律では処方を許可されるのは人間医師に限られているため、規制当局や医療専門家の間でAIの医療介入基準を巡り対立が表面化している。 Utah州はレジラトリー・サンドボックス制度を活用し、5人のAI専門家からなる委員会が安全策を講じる一方で、州医師免許管理ボードのAlan Smith委員長らは連名でプログラムの中断を求めている。Smith氏は薬剤の副作用や相互作用のリスクを指摘し、医薬品リストから不整脈治療薬などの削除が実施された。UPennのEric Bressman医師も、AIに医療ライセンスを与える閾値を越えたと指摘し、人間同様の厳格な訓練と基準が不可欠だと強調する。 規制の枠組みにも課題が残る。医療機器やAI算法は連邦食品医薬品局(FDA)の管轄だが、FDAは具体的な認可や厳格な監督を当面行わない方針を示す。これにより州ごとの規制緩和が相次ぎ、TexasやWyoming州でも同様の試みが行われている。IowaやIdahoでは民間シンクタンクCicero Instituteが提唱する法案が導入され、AI医療サービスに正式なライセンス付与を目指す動きが加速している。 Doctronic創設者のAdam Oskowitz医師は患者の利便性向上と医師の業務負担軽減を目的とし、将来的な検査指示までAIへ移行させる計画だ。同社アルゴリズムは500件の診療記録で人間医師の診断と80%一致する検証結果を発表しているが、査読を経た独立データは未提供だ。 Utah州のZach Boyd AI責任者は過剰なほど慎重に運用していると説明するが、University of UtahのDaniel Aaron法学教授はエビデンス不足のまま展開すれば信頼を損ない長期的な反発を招くと警告する。AI処方の正規化を巡る議論は、医療制度の未来設計と技術革新のバランスを問う国家的課題として、今後は連邦レベルのガイドライン策定へ移行する可能性が高い。
