AIが融合プラズマの観測を飛躍的に向上、センサー不足を補完する新技術が登場
プリンストン大学のアザラクシャ・ジャラルヴァンド氏らの研究チームが、核融合エネルギー装置内のプラズマ状態を高精度で監視・制御するための新AI「Diag2Diag」を開発した。このAIは、実際のセンサーが記録できないデータを合成し、プラズマの状態をより詳細に再現する。特に、プラズマの「ペデストル(辺縁部)」と呼ばれる重要な領域の観測が困難な点を補完し、実験的な核融合装置の制御精度を飛躍的に向上させる。この技術は、センサーの故障や劣化によるデータ欠損を補い、将来の商業用核融合炉の信頼性と経済性を高める可能性を秘めている。 Diag2Diagは、複数のセンサーから得られたデータを分析し、別のセンサーのデータを「合成」して再構成する。例えば、電子温度や密度を測る「トンプソン散乱」診断は、高速な変化を捉えるには限界があるが、Diag2Diagはその不足を補い、より高分解能のデータを提供する。これにより、プラズマの急激な不安定化を早期に検知でき、安定したエネルギー生成を実現する。 研究は、米国エネルギー省のプリンストンプラズマ物理研究所(PPPL)と、中央大学、コロンビア大学、ソウル国立大学などとの国際共同研究で行われ、DIII-D核融合施設での実験データを基に開発された。このAIは、核融合炉の設計を簡素化し、センサー数を削減することで、装置を小型化・低コスト化し、保守性も向上させる。 また、Diag2Diagは、磁気乱流を制御する「共鳴磁気摂動(RMP)」によるELM(エッジ局所モード)抑制のメカニズムを裏付ける新たな証拠も発見。磁気島がプラズマ辺縁部の温度と密度を均一化することで、不安定なエネルギー放出を抑制するという理論を実証した。 研究チームは、このAIを他の核融合診断や宇宙機、ロボット手術など、センサー情報が限られる高信頼性システムにも応用する予定。核融合エネルギーの実用化に向けた重要な一歩として、今後の展開が期待されている。
