AIが放射線科医を置き換えることはない——実際の臨床現場で見えてきた真実
AIは放射線科医を置き換えていない。2017年に発表されたAIモデル「CheXNet」は、10万枚以上の胸部X線画像で学習し、パンデミック検出において専門医のパネルを上回る精度を示した。その後、Annalise.ai、Lunit、Aidoc、Qure.aiらが、複数の画像タイプで数百の疾患を検出できるモデルを提供。一部の製品は、緊急度の高い画像を優先順位付けしたり、診療チームに次の対応を提案したり、電子カルテに統合可能なドラフトレポートを生成する。IDx-DRなど、医師の画像読影なしで運用可能なモデルもFDA承認を受けている。現在、FDA承認済みの放射線AI製品は700以上あり、医療AIデバイスの約3分の2を占める。 しかし、AIの導入は進んでいない。2025年、米国の放射線科研修プログラムは1,208枠を提供し、前年比4%増。職員の空き状況は歴史的高水準。平均年収は52万ドル(2015年比48%増)で、同国で2番目に高い収入を記録している。 その理由は3つある。第一に、AIはベンチマークテストでは人間を上回るが、実際の病院環境では性能が著しく低下する。訓練データに偏りがあり、実際の画像(角度が悪い、ぼやけているなど)では機能しない。第二に、規制と保険の壁がある。AIが完全に自律的に診断する場合、FDAは極めて厳しい審査を課す。また、保険会社はAIによる誤診のリスクを懸念し、AI生成診断の補償を拒否するケースが多い。第三に、AIが置き換えるのは診断の一部にすぎない。放射線科医の実務の36%は画像読影に費やされるが、残りは患者対応、医師間連携、教育、検査計画の見直しなどに使われる。 さらに、過去の経験からも、AIの実用化は遅れる。1990年代に導入された「コンピュータ支援診断(CAD)」は、実際の臨床現場では、がん発見率は上がらず、生検の数だけ増加。2018年、メディケアはCADの追加報酬を廃止した。医師がAIの提示に過剰に依存する傾向があることが要因とされる。 AIの性能が向上しても、人間とAIの協働が主流になる。AIが診断を補助することで、放射線科医はより複雑な業務に集中できる。かつてのデジタル化の経験からも、スピード向上は需要の拡大につながり、結果として職員数は増加した。放射線科は、AIの性能が高くても、人間の存在が不可欠な分野の典型例である。AIの進化は生産性を高めるが、置き換えではなく、新たな働き方の変化をもたらす。
