FireANTs、医療画像解析を週から数分へ
ペンシルベニア大学工学者らは、人工知能と幾何学最適化を融合させたオープンソース画像処理アルゴリズムFireANTsを開発し、学術誌Nature Communicationsに発表した。本技術は、医療画像のマッチング処理を従来法の最大約一週間から数分に短縮しつつ、高い精度を維持することに成功した。 医療画像解析において、経時的な組織変化を細部まで検出する密対応マッチングは臨床的に重要だが、計算コストが高いため実用化が課題となっていた。従来のAI手法は学習データへの依存度が高く、予測誤差が生じやすかった。一方、FireANTsは予測モデルに頼らず、幾何学的最適化手法を用いて画像間の対応関係を数学的に求解する。共同第一著者のロヒト・ジェナ氏は、既存の画像処理ツールANTsの幾何学的基盤を見直し、曲面上の最適化計算を平面空間上で効率的に実行する手法を構築した。これにより、計算負荷を大幅に削減しながら高精度な画像登録を実現した。 評価試験では、15,000ペア以上の画像データを用い、複数の臓器系、異なる画像診断モダリティ、複数の生物種にまたがる12以上のデータセットで検証された結果、FireANTsは従来のAI手法や最適化ツールキットと比較して、標準チップ上で最大約7倍、GPU環境では最大3桁以上の高速処理を記録した。精度の低下は確認されていない。 臨床応用における影響は極めて大きい。放射線科ではフォローアップ撮影による画像比較が日常業務の大半を占めるが、処理時間がかかる画像登録は実際の診療ワークフローに組み入れられにくい。FireANTsの高速処理により、リアルタイムの変動検出が可能となり、認知症の早期兆候など微小な組織変化の追跡が実用的なレベルで実現する見込みである。共同主任著者のプラティック・チャウダリ氏とジェームズ・ジー氏は、本技術が高速化と信頼性の両立により、従来不可能だった新規ワークフローとアプリケーションの実現を可能にする基盤になると評価している。 本技術は医療分野に限らず、地理空間マッピングやロボティクスなどの分野でも応用が期待される。計算リソースの削減は、大規模コンソーシアムに依存していた高度な画像解析を、研究機関や中規模ラボでも実施可能にする。今後は臨床現場への標準的導入と、オープンソースコミュニティにおけるさらなる拡張が期待される。
