AIが3D CT組織画像を仮想染色
パウル・シェルター研究所(PSI)の研究チームは、マイクロX線CT画像に人工知能を適用し、生体組織を三次元的に仮想染色する手法「VISTACT」を開発した。成果はJournal of the Royal Society Interface 2026年号に掲載された。 従来の病理学は超薄切切片の染色観察が標準だが、時間と手間を要する。ゴラン・ロブリク博士らは位相差マイクロCTと機械学習を融合させた。位相差CTは軟組織をミクロン単位で可視化するが白黒出力のため色彩情報が欠如していた。研究チームは実測の染色切片とCTスキャンのペアで条件付き敵対生成ネットワークを学習させ、白黒データから細胞核やコラーゲンなどの色彩マーカーを自動付与するモデルを構築した。 空間的対応付けの高精度化が鍵だった。多段階の自動マッチングプロセスにより、三次元データと二次元画像の位置関係を従来の手法より精密に特定した。肺高血圧症由来の肺組織で検証した結果、病変血管を三次元的に追跡可能となり、血管内血液や肺表面組織を明確に色分けして描画することに成功した。クリスティーナ・アルマグロー・ペレス氏らによる検証で、手法の自動化と処理速度の向上が確認された。 現在、VISTACTは臨床本格導入には至っていない。シンクロトロン施設で得られたデータは巨大であり、細胞核の描写には解像度が不十分な場合もある。AI染色は統計的な推論であり、実際の組織学的検出を直接代替するものではない。臨床実用化にはさらなる検証が必要だ。 一方で非侵襲性かつ自動化が可能で、従来の切片作製より大幅な処理速度向上が期待できる。腫瘍や血管病変などの複雑な三次元組織解析において、疾患バイオマーカー探索の加速や診断枠組みの確立に貢献すると期待されている。細胞病理学の確立から150年余りを経て、病理診断はデジタル三次元化への転換期を迎えている。
