マスィブバイオ、AIマルチエージェントプラットフォーム「リティキュラムネクサス」を発表。患者の治療経路をエンドツーエンドで最適化。
ドイツ・ベルリン—国際がん研究学会(ESMO)AI & Digital Health 2025会議にて、米国を拠点とするバイオテクノロジー企業マッシブバイオ(Massive Bio)は、同社史上最大の技術的飛躍として「リティキュラム・ネクサス(Reticulum Nexus)」を発表した。これは、がん治療の全プロセス——初回相談から最終的な臨床試験登録まで——を患者中心に統合的に管理するマルチエージェント型プラットフォームであり、グローバル規模の医療ネットワークで運用可能である。 従来、がん臨床試験への参加は、データの断片化、施設中心のプロセス、人的リソースに依存した手作業ワークフローといった課題に直面しており、患者のアクセスは限られていた。特に、希少がんや新薬開発のための試験では、適格な患者の発見と登録に数か月を要するケースも珍しくない。リティキュラム・ネクサスは、AIを活用した複数の自律型エージェント(AIアシスタント)が、医療機関、研究者、患者、保険会社など多様なステークホルダーとリアルタイムで連携し、患者の病歴、遺伝子情報、治療経過、地理的要因を統合的に分析。これにより、適格な試験候補者を数分以内に特定し、登録プロセスを自動化・最適化する。 発表では、北米・欧州・アジアの3か国で実施されたパイロット試験の結果も報告された。その結果、試験登録までの平均期間が従来の45日から12日に短縮され、特に少数派の遺伝子変異を持つ患者の登録率が3倍に上昇した。また、医療現場の負担は20%以上軽減され、臨床研究の効率性と公平性が大きく向上した。 マッシブバイオは、2018年に設立され、AIとデジタルヘルスを融合したがん研究支援技術の開発を専門とする。同社は、過去に「Reticulum」シリーズのAIベースの患者マッチングツールを発表しており、今回のネクサスはその進化版として、ネットワーク間の連携と自律的運用を実現した点が特徴である。 専門家からは、「これは臨床試験の構造そのものを変える可能性を持つ」との評価が相次いだ。東京大学医学部のがん研究センターの山本教授は、「患者の声に耳を傾け、その都度最適な選択をAIが提示する仕組みは、『参加型医療』の実現に向けた重要な一歩」と述べている。また、欧州臨床試験ネットワークの幹部も、「グローバルなデータ共有と倫理的基準を維持しながら、スピードと精度を両立できるプラットフォームとして、今後の標準となる可能性がある」と評価している。 リティキュラム・ネクサスの導入は、希少がんや未治療領域の研究を加速させるだけでなく、医療格差の是正にも寄与すると期待されている。今後、各国の規制当局との協働を通じて、プライバシー保護とデータセキュリティを確保しながら、実際の臨床現場での導入を加速していく予定である。
