AMD、CUDA覇権に切り込む
AMDは長年NVIDIAのCUDAが独占してきたAI計算市場でのシェア拡大に向け、ソフトウェアエコシステムとハードウェア基盤の刷新を加速させている。専門調査機関SemiAnalysisは、2024年にソフトウェアギャップ縮小確率0と予測していたが、ROCmの改良速度と大手企業との連携により、2026年後半には大成功の機会があると見方を転換した。OpenAI、Meta、Anthropicは合計14GW規模の複数世代調達契約を締結し、MicrosoftもAzure向け次世代ラックHeliosの大量導入を決定した。これによりAMDは代替チップ供給者からシステム統合企業への転換を果たした。 主力製品MI455Xは432GBのHBM4を備え、72基を収容するHeliosラックは1.4EFLOPSのピーク演算性能を発揮する。Ethernetベースの開放型アーキテクチャ採用はシステム統合の複雑さを増大させており、銅ケーブルの信号整合性問題により単一ラックあたり約550個のリタイマーと1700本以上のフライワイヤ配置が必要な生産難航が報じられている。2026年後半の納期遵守が成否を分ける鍵となっている。 ソフトウェア面ではROCmの最適化がAIエージェントの活用により飛躍的に高速化している。オープンソース推論フレームワークとAMDが直接連携し、ClaudeやCodexを活用した自動コード移植により新旧モデル対応期間を大幅に短縮。ROCm.AIプラットフォームを通じてエージェントがワークロードを分析し最適化を実行する体制を構築した。ただしテスト環境の不足が新たなボトルネックとなっており、安定した大規模GPUクラスターの不足によりマルチノード環境での検証が停滞している。 競争の焦点は単一デバイスから分散推論基盤へ移行している。AMDはCerebrasと協調し高スループットと低遅延を分担する戦略を打ち出した。先行投資としてOpenAIとMetaに対しGPU調達規模に応じた株式権証を提供し、実稼働環境でのフィードバック獲得を急ぐ姿勢を明確に示した。AMDの挑戦は次世代カーネルの開発速度そのものよりも、Heliosラックの生産良率向上と大規模分散環境でのROCm安定性検証に依存している。本格納品を通じて最初のユーザーが生態系を共同で成熟させるプロセスが、市場再編の行方を決定づける。
