AI創薬化合物、特定細胞標的に従来法を上回る
臨床創薬の主流であった標的タンパク質依存型のアプローチから、細胞の表現型変化を対象としたフェノタイプ創薬への転換を図る画期的なAI駆動戦略が、IRBバルセロナの研究チームにより開発された。同研究所の構造バイオインフォマティクス・ネットワーク生物学ラボを率いるパトリック・アロイ博士らが主導し、特定の分子標的を介さず、細胞に意図した生物学的効果を引き起こす新規化合物の設計に成功した。 同チームはまず、膵臓がん由来の細胞株6系統および対照細胞2系統の計8種類のモデルを用い、1万1000超の化学化合物の活性をスクリーニングして独自データベースを構築した。この生体活性データに基づき構築した予測モデルは、従来の化学的類似性のみを基にした手法よりも精度が高く、生成AIと機械学習システムに組み込まれた。このシステムは、特定の細胞に対しては強力に作用し、他の細胞や対照群には影響を与えないという二重の基準で新規分子を生成する。 生成された候補化合物の実験的評価により、設計通りの細胞選択性を示す分子が複数確認された。既存の標準的なスクリーニング手法と比較して活性が優れており、多くの化合物は既知の構造とは異なる革新的な化学骨格を有していた。アロイ博士は所望する生物学的効果を実現するAI設計の化合物を創出し、細胞への選択的作用を実証したと指摘する。 本手法は、治療標的が不明確または特定困難な疾患領域において、従来の創薬プロセスを大幅に短縮し、標的を絞った候補化合物の同定を可能にする。早期の段階ではあるが、表現型を直接標的とするAI創薬のパラダイムシフトを示す成果として、次世代医薬品開発の新たな指針となる有望な技術と評価されている。
