元Meta首席AI科学者、ヤン・レクンが世界モデル研究を軸に新AIスタートアップ設立へ
メタの最高AI科学者であるヤン・レクン氏が、同社を退職し、新たなAIスタートアップの設立に乗り出すことが、メタの広報担当者によって確認された。レクン氏は自身のフェイスブック投稿で、長年の関心である「世界モデル(world-model)」研究を軸にした新会社の構築を発表した。メタはレクン氏の新事業と協業する意向を示しているが、具体的な協力内容については明らかにされていない。 レクン氏の退職は、メタAI部門における内部の不確実性と組織再編の流れと重なる。最近数か月間、同社は競合他社から数十名の優秀な研究者・エンジニアを採用し、元Scale AIのCEOであるアレクサンドル・ワン氏が率いる「スーパーアイテルジェンスラボ(Superintelligence Labs)」にAI開発を統合。しかし、高給で採用された新メンバーと既存の研究者との間に緊張が生じ、一部の研究者らが退職を検討していると報じられている。 2023年8月には、AI開発を研究、トレーニング、製品、インフラの4部門に分離する、同社史上最大の再編が実施された。これはOpenAI、Google DeepMind、Anthropicなどとの大規模モデル開発競争に応えるための戦略的転換だった。しかし、人材の流動が激しく、Llama 4のリリースは社内・社外でさほど好意的な反応を得られなかった。さらに、MetaのオープンソースAIフレームワーク「PyTorch」の開発者であるスーミンス・チントラ氏も、11年間勤務した後、ミラ・ムラティ氏の「Thinking Machines Lab」に移籍した。 レクン氏の退職は、予想外ではなかった。彼は、大規模言語モデル(LLM)への依存を警戒し、画像や感覚データから物理世界を理解・予測する「JEPA」アプローチを長年提唱してきた。一方、メタは近年、LLMの規模拡大と商業モデル開発に集中しており、レクン氏のビジョンとは方向性が異なる。 この動きは、AI技術の将来を巡る戦略的分岐を象徴しており、研究者個人のビジョンと企業のビジネス戦略の間に生じる摩擦を浮き彫りにしている。
