ミストラルAI、クラウド戦略強化へKoyebを買収
フランスのAI企業Mistral AIは、AIアプリのスケーラブルなデプロイとインフラ管理を手がけるパリ発スタートアップ「Koyeb」を買収した。これは同社初のM&Aであり、AIクラウド分野への本格的進出を示す重要な一歩。Mistralはこれまで大規模言語モデル(LLM)の開発で知られていたが、2025年6月に発表した「Mistral Compute」というAIクラウドインフラサービスを加速させる狙いがある。 Koyebは2020年にスケールウェイ元社員らが設立。サーバーの管理をユーザーが気にせず、データ処理を実行できる「サーバーレス」の概念を実現。特にAIの拡大に伴い、AIエージェントの実行環境を提供する「Koyeb Sandboxes」もリリース。買収前からMistralのモデルを含む複数のAIモデルをサポートしており、技術的連携は既に進んでいた。 今回の買収により、Koyebの13名の社員と3人の共同創業者(Yann Léger、Edouard Bonlieu、Bastien Chatelard)がMistralのエンジニアリングチームに参加。CTOのTimothée Lacroixが統括し、Koyebのプラットフォームは「Mistral Computeの核となる要素」へと進化する予定。今後は、顧客の自社ハードウェア(オンプレミス)でのモデル展開、GPUの最適化、AI推論のスケーラビリティ強化が主なタスクとなる。 Mistralは、米国に依存しない欧州のAIインフラ構築を推進。数日前にはスウェーデンに14億ドル規模のデータセンター投資を発表。Koyebはこれまで860万ドルの資金調達を実施しており、2023年の700万ドルのシードラウンドはパリのVC・セレナが主導。同VCのフロリアーヌ・ド・モポウ氏は、今回の提携が「欧州の主権あるAIインフラの基盤構築」に貢献すると評価した。 Mistralは今年、年間繰り返し収益(ARR)で4億ドルを突破。Koyebも今後はエンタープライズ向けにシフトし、新規ユーザーの無料プラン(Starter tier)の提供を終了する。買収の金額は非公開。今後もM&Aの可能性はあるが、CEOのアーチュール・メンシュ氏は「欧州で先端研究を実施する企業」として、人材採用を強化している。
