共有記憶と類似脳活動パターンの相関
トロント大学、マギル大学、カリフォルニア大学デービス校の共同研究チームは、同一の体験を異なる形で記憶する神経メカニズムを解明するため、機能磁気共鳴画像法(fMRI)と人工知能(AI)の自然言語処理(NLP)技術を融合させた研究を実施し、その成果を学術誌「Nature Communications Psychology」で発表した。 本研究では24名の参加者にアニメーション映像を観賞させ、fMRIによる脳活動データを収集した。同時に、参加者の記憶回想データをNLPモデルで処理し、記憶内容の類似性をベクトル化して定量分析を行った。特に、主観的回想や内省に関与するデフォルトモードネットワーク(DMN)の空間的パターンに焦点を当て、観賞時と想起時の脳活動相関を比較した。 解析の結果、記憶内容の類似度が高い参加者群ほど、観賞時および想起時にDMNにおいて高い空間的同期を示すことが確認された。特に後部中枢皮質、内側前頭前皮質、前頭側頭皮質の3領域で活動パターンの一致が顕著であり、これらの領域が外部事象の主観的解釈とエピソード記憶の形成において重要な役割を担っていることが示唆された。 共同執筆者のJune-Kyo Kim氏とJoshua Koh氏は、NLPとニューロイメージングの融合が記憶表現の神経基盤を解明する強力な枠組みであることを実証したと指摘する。本研究成果は、人間の認知過程における個人差の神経的根拠を明確にし、エピソード記憶モデルの精緻化に寄与する。今後はAIと脳科学の跨領域的手法が、認知機能や精神疾患の研究において標準的な解析アプローチとして定着する可能性を示しており、神経工学および認知科学の分野に重要な影響を与えると期待されている。
