アントロピック、中国AI企業らがClaudeを不正利用してモデルを剽窃か
米人工知能企業アントロピック(Anthropic)は、中国の主要AI企業3社が自社のAIモデル「Claude」の出力を不正に利用し、自社モデルの性能向上を図っていたと発表した。同社はDeepSeek、MiniMax、Moonshot AIの3社が「工業規模の違法なキャンペーン」を通じて、Claudeの出力データを「蒸留(distillation)」手法で収集し、自社モデルの訓練に使っていたと明言。蒸留とは、高性能モデルの出力をもとに、低性能だが効率的なモデルを学習させる技術で、正当な利用も存在するが、今回のケースはアントロピックの利用規約および中国へのサービス提供制限に違反している。 同社によると、不正利用は約2万4000の偽アカウントを用い、1600万回以上の対話が行われた。特にDeepSeekは、中国政府の検閲に抵触する質問に対する回避策を模索するなど、意図的な対策も見られた。また、MiniMaxはアントロピックが新しいモデルをリリースした直後、24時間以内にアクセス先を切り替え、最新機能を迅速に抽出していた。 アントロピックは、こうした不正行為が単なる競争の域を超えて、バイオ兵器の開発など重大なセキュリティリスクを引き起こす可能性があると警告。蒸留されたモデルは、元のモデルに備わる安全対策が不十分な場合があり、危険な用途に使われる恐れがあると指摘。同社は「行動特徴のフィンガープリント」システムの導入や、他社との情報共有、さらなる防御策の開発を進めている。 また、アントロピックは米国の先端AIチップ輸出制限を支持。中国企業が高性能チップを入手できないことで、直接的なモデル訓練だけでなく、不正な蒸留の規模も制限されると主張。これは、Nvidiaのジェンセン・ファンCEOが「輸出制限は中国のAI発展を防げない」と反論する中、技術的・政策的対応の重要性を強調するものだ。 一方で、アントロピック自身も著作物の不正利用で問題を抱えており、2025年1月に「Project Panama」と呼ばれる世界の書籍を破壊的にスキャンする計画が報じられた。同社は前年、著者らとの集団訴訟で15億ドル(約2300億円)の和解金を支払い、不正行為を認めないとしている。 この件は、AI開発の競争が技術的限界を超えて、倫理、法的、国際的な安全保障問題へと深く関わっていることを示している。
