IBM、エンドユーザー向けAI戦略で着実に成長 「Big Blue」の長期勝負
IBMは、AIの未来を「長く、じっくりと」戦略的に構築している。世界最大のAI企業にはなれないかもしれないが、10万以上の企業顧客に向けた安全で信頼性の高いAIインフラとサービスの提供を通じて、持続的な収益を生み出す「最も利益の高いAI戦略」を展開している。同社は近年、Red HatやHashiCorpの買収を進め、PowerとzシステムにAI向けの行列演算ユニットや自社開発の推論アクセラレータ「Spyre」を統合。さらに、RHEL.AIやOpenShift.AIといったソフトウェア拡張により、既存のシステムにAIを安全に組み込む環境を整えた。 2025年3月期の業績では、売上高163.3億ドル(前年比9.1%増)、純利益17.4億ドル(前年同期の3.17億ドル赤字から転換)を達成。特にインフラストラクチャ部門は17%増の35.6億ドル、システムzの売上は60%増と急成長。Hybrid Infrastructure(ハイブリッドインフラ)全体では28%増の22億ドルを記録。Spyreアクセラレータの導入が、今後のPowerとzシステムの売上を倍増させる可能性を秘めている。 ソフトウェア部門は72.1億ドル(10.5%増)を達成。Red Hatが20.9億ドル(12%増)、その他のデータベース・ミドルウェア・開発ツールが32.3億ドル(17.5%増)と好調。特に生成AI(GenAI)関連のコンサルティング受注は15億ドルに達し、前年比2倍以上。GenAI関連の受注は全体の310億ドルのコンサルティングバックログの22%を占めるまでに成長。 IBMは、顧客が膨大なGPUを購入したり、新しいクラウドプラットフォームを学習する必要がないことを理解している。多くの企業は既存のシステムでAIを動かしたい。そのため、IBMは「自分たちのシステムにAIを安全に組み込む」ことを最優先に据え、自社開発のコードアシスタント「Project Bob」(Anthropic Sonnet 4.5モデル搭載)も導入。Powerやzシステム上で動作し、Spyreアクセラレータを活用する設計だ。 Wall Streetの期待は短期的だが、IBMの顧客は長期的かつ保守的。同社は「次の爆発的成長企業」ではなく、「10万顧客の『Big Blue』」としての役割を確立している。その戦略は、AIの進化に合わせて、インフラ、ソフトウェア、コンサルティングを統合的に提供し、信頼性とコスト効率を実現することにある。
