AIは成長の道具に――タイド・ロック、コスト削減目的の導入を明言否定
米国San Diegoとニューヨークを拠点とする投資ファーム、Tide Rockは、AIをコスト削減の手段として使わない方針を明確にしている。同社のCEOであるRyan Peddycord氏は、ビジネスの中心は「成長」であり、「コスト削減」や「効率化」の言葉は会社の指針に含まれないと語った。Tide Rockは、従来の私募ファンドとは異なり、借入を用いた買収は行わず、10億ドル規模の資産を管理。13年間で50件以上の買収を実施し、年間24%の有機的売上高成長を達成。失敗は1件のみと、高い成功確率を誇る。 同社の戦略は、創業者自身が「退職」や「家族の病気」など、資産を守りたいという動機で売却を検討する企業を対象に、そのブランド、従業員、継続性を守りながら成長を支援することにある。そのため、AIを「人件費削減」の道具として使うことは、その価値観に反する。代わりに、AIは「成長」の支援に使われている。 Tide Rockは2年間、AIエンジニアを配置。しかし、その目的はコストカットではなく、買収先企業の成長を加速すること。同社は、100本以上の動画と500ページ以上のドキュメントで、経営のベストプラクティスを共有。AIツールは、経営者、財務担当、営業VPごとに適切な情報にアクセスできる仕組みを支える。また、中央集権的な人材採用チームやマーケティング・営業責任者を配置し、各企業が自立できるように支援。 AIの活用例として、政府・航空・防衛分野の製造企業向けのサプライヤー探しを挙げた。例えば、Blue Originが大規模契約を獲得した際、公表情報からその契約内容を逆算し、必要な部品・サービスを特定。その情報を元に、自社の買収先企業が早期に参入できる機会を創出。同社は、AIで「非公開の企業情報」を収集・分析する能力を自社で開発。この技術は、買収のターゲット探しに加え、ポートフォリオ企業の新規顧客開拓にも活用されている。 Peddycord氏は、AIによるコスト削減は「他社が既に手をつけており、自社が投資する価値がない」とし、自社のリソースは「成長」に集中すべきだと主張。AIは、人件費を削る道具ではなく、企業の持続的成長を支える戦略的インフラとして位置づけられている。
